長編

□顕現 〜ふたたび〜
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祭りの会場にある溝口がやっている店。所謂射的なのだが、いろいろとおかしな物が置いてある。

―――ボールや陶器も十分おかしいのですが、拳銃を景品にしますか普通……。

レイの第一印象はそれだった。溝口のやる射的は、何故かボールや陶器、挙句には拳銃があり、2年前はライフルがおいてあったのだ。ボールはすぐ落ちそうだし陶器は弾が当たったら割れるだろう。拳銃にいたっては論外だ。何故かサプレッサーや、LAM(レーザーサイト)付きという豪華2点セットなのだが……。

―――他の人の手に渡る前に回収しますか。

レイはそう思い、溝口の射的会場に入る。そこには意外な人物達がいた。

「あ〜当たらない」

「残念、咲良ちゃん。残念賞の林檎飴だ」

剣司と咲良が先に射的会場に来ていた。どうやら咲良は一番上の段にあるおかしな形をした陶器の器を狙っていたようだ。おそらく真壁陶工の作だろう。

「おっ、レイ、カノン。どうだ?チャレンジするか?」

溝口はレイたちに気づいたようで、射的用のライフルを、レイに手渡す。ちょうど良い、他の人が落とす前に拳銃を戴きますか。

 ――――

「まったく、レイの射撃技術には呆れるな、ホント」

剣司の言葉にレイは心外な顔をして「人を化物みたいに言わないでください」と言い返した。

例の拳銃は一発で撃ち落し、残りの弾は、陶器の群れを一つ残らず打ち砕いてしまい、溝口は今掃除中であった。

もちろん拳銃は戴きましたが、何か?

「レイはああいうの、昔から得意だからな」

そして今、レイたちと咲良たちが一緒になって祭りを回っているのである。カノン咲良達に見せ付ける様に、さっきよりも強く、レイに抱きついている。レイの顔は赤いままである。

 咲良は関心半分呆れ半分「カノンさ、すごいデレデレだね」と言うがカノンは得意げに

「羨ましいか?」

と返した。途端に咲良は顔を真っ赤にし「そんなんじゃないよ!」と反論した。……何の恥ずかしげも無く、他人に見られていようとも、堂々抱き付けるカノンにレイは感心してしまった。まあ、嬉しくもあるのだが。

「そういえば、咲良さん。歩いていても平気なんですか?」

「うん、今日は調子が良い見たいだから」

「そうですか、でもあまり無理は駄目ですよ。はしゃぎすぎて、体調を崩したら元も子もありませんからね」

「ありがと。はぁ、剣司もこれくらい優しかったらね」

咲く良の言葉に剣司は、「いつも優しくしてるだろ」と反論するが、咲良は、「デリカシーが無いって言ってんの」と返した。

「さっきだって、「咲良、重くなったか?」なんて言ってた奴の、何処にデリカシーがあんのよ」

剣司は「うぐっ」と黙り込んでしまうが、現実は過酷である。レイが追撃をかけるように、

「剣司君、女性に対して体重のことはNGワードですよ」と言い、カノンは「デリカシーが無さ過ぎだな」とさらに追い討ちをかける。剣司はがっくりと肩を落とし、「カノンはともかくレイに女心を諭されるなんて……」とつぶやいた。

レイは心底意外そうに「失礼ですね、少なくとも貴方の5倍はデリカシーはありますよ」と止めを刺した。

「たしかに、レイは優しいもんね。でもさ、それをちょっとはカノンにもあげたら?」

咲良の言葉にレイは、「現在絶賛提供中です」と答え、カノンは「まだ全然足りん」と今度は頭をもたれかけ、レイは顔を赤くしながら、今日だけですよと言うが、満更でもなさそうである。

その様子に咲良が「甘すぎ、砂糖より甘いよあんたら」と批判し、剣司が「見てるこっちが胸焼けしそうだ」と言う。

その言葉にカノンのみならずレイが「羨ましいですか?」と訊き、剣司が、顔を真っ赤にしながら「んな訳無えだろ」
と反論した。が、レイは「強がらなくても良いですよ」と笑顔で剣司に言う。

「誰か助けてくれ〜」と咲良をみるが、咲良もカノンに質問攻めにあっていた。

剣司はがけっぷちに追い詰められたが、すんでのところで助けがやってきた。

「何やってるんだお前ら」

「カノン、べたべたし過ぎ」

一騎と真矢である。真矢がジト眼でカノンを見るがカノンは何の臆面も無く「羨ましいだろう」と言う。真矢は「別に」
と動じずに返したが、顔が赤いので説得力無しである。

 ついでに、普段は生真面目な彼女がこうまでべたべたしているのはレイの責任でもあるので、一騎と真矢はレイが
懇願の眼を向けるのを軽く流した。
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