長編
□異変 〜くるす〜
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竜宮島。アルヴィス内にある取調室の中で、二つの影が対話をしていた。
「来栖操」
真壁史彦は、向かい側に座るモノが名乗った名前を復唱した。
「同化した人間のなか」
「違う」
史彦の問いに対し、来栖は否定の言葉を放つ。
「皆城総士の知識を使って、俺の存在を君達の言葉にすると、そうなるみたい」
――――
史彦と来栖の対話は島全体に中継されており、アルヴィス内部のブリーフィングルームも、例外ではなく、そこには真壁一騎を一とする、数人のメンバーが集まっていた。
「全島民に中継するなんて」
ジェレミー・リー・マーシーはこの光景を見つつ、不安の声を上げる。
「皆の不安を煽るのでは……」
その言葉に、溝口はいたって普通に「バカ正直なやり方が、真壁のやり方さ」と応えた。そして、やや楽観的に「けっこう効果があるんだな、これが」と言った。
――――
「君達と話すには名前が必要でしょ」
「皆城総士が、お前を艦に乗せたのか?」
史彦の質問に対し、来栖は「俺が望んだんだ」と答えた。
「彼、君達に何か伝えたがってた。ほら、艦に彼の言葉があるでしょ」
来栖の答えに史彦は「あのデータは皆城総士によるものだと?」と言い、「何故彼が島に来ない」と質問をぶつけた。そう、こんな回りくどい真似をするなら直接島に出向いたほうが確実であり、皆城総士という人間はそういう人間である。その疑問に来栖はこう答えた。
「大きな炎の所為だ。君達人類がやったんだ。俺の仲間もソレで苦しんでる」
悲しそうに答える。その言葉に史彦は自らの胸にてを当てた。―――いや、胸を押さえた。と言うほうが正しいだろう。
「人類軍の、核攻撃か」
「そう、多くの痛みが生まれて、俺達のミールは新しく生まれることを嫌がった」
悲しそうに顔を少し伏せながら来栖はそう答え、その後、笑いながら顔を起こし「だから、代わりに俺が生まれたんじゃないかな」
といった。
――――
『代わり?お前達のミールは、消滅したわけではないんだな?』
対話の中継を聞いているファフナー隊の中で、優れた観察力を持ち、人の心情を見抜くことに長けている、遠見真矢は映像を見ながら、あることに疑問を持った。
「真壁のおじさん。どこか悪いのかな?」
史彦が胸に手を当てているのを見て、真矢は何となくそう思った。