短編

□過去 〜すてたもの〜
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荒れ果てた荒野。かつてあった町並みは既に
廃墟となり、賑やかだった人並みは、既に此処には無い。

そんな中、ある廃墟でただ二人、生き残った
者が身を潜めるようにしていた

「カノン。だいじょうぶ?もうすこしあったかくしたほうがいいかな?」

「……うん」

そこにいたのは、カノン・メンフィス。及び
レイ・ベルリオーズであった。そう、ここは
6年前、フェストゥムに彼らの故郷。アイルランド、タブリンが崩壊に導かれ、人類軍に拾われる少し前の話。

―――

カノンは学校で、いつもどおりに、入り始めたばかりのクラブ活動を楽しんでいた。彼女は
当時非常に活発で、やや男勝りなところもあったからなのか、男女問わずに人気であった。そんな彼女は最近入り始めたサッカーボールクラブで、友人達と練習をしていた。

「カノン!パス」

友人からのパスをもらい、カノンは一気にコートを駆ける。当時から学年で足が一番速かった彼女は、ディフェンスを突破し、ゴールへ向けてシュートを放つ。それは見事にゴールへと吸い込まれていって、今日3得点目を獲得した。

「ナイスカノン!!」

「やっぱカノンはすごいね!」

そんな感じでカノンは瞬く間にレギュラー入り直前にまで成長しており、これからの活躍に期待をされていたのだった……。

―――

場所は変わって校舎の中のとある部屋。その中で、数人の子供達が、机をはさんで、あるゲームを行っていた。その中でも、一人の少年が、年上の少女とゲームに興じていた。

「……チェックメイト」

「くっそー、私の負けだな」

彼はレイ・ベルリオーズ。そしてレイの相手をしていたのは、カノンの姉である、アルト・メンフィスだった。レイとあるとは親友であり、カノンとレイは幼馴染という関係だ。

「またボクのかち。アルト、いいかげんあきらめたら?」

「ウルセー。年下の、しかも弟分にボロ負けして、兄貴分がだまって引き下がれるかい」

レイははあっ、とため息をつくと、駒を並べなおす。いま彼らがやっているのはチェスであり、レイは、タブリンで開かれるチェス大会で、2度連続で、優勝をしており、地元では、結構有名人である。ちなみに彼の父親は
、元軍人で、チェスの世界大会で優勝したこともある腕であった。

「それにしてもアルトもよくやるよなー。レイあいてにさ」

「そうそう、レイだって去年2年3年生の時に、優勝してて、今年も最有力候補だって言うのにね」

上級生達が笑っているのをアルトが「なんだとー」と言い返している間、レイは窓の外を見ていた。

――――

「ねえさん。またレイにしょうぶふっかけてボロまけしたの?」

「うっせえ。ちょっと油断しただけだ」

「きのうもそうやっていいわけしたよね」

真ん中にレイを置いて、右にカノン、左にアルトという位置で3人は帰路についていた。
カノンたちとレイの家は、何の因果か向かい側にあり。徒歩11歩の距離にある。

じゃあ、またあしたね―――。そういって家の前で別れ、3人はそれぞれの家に入っていく。誰もこの後に起こる惨劇など想像もしていなかっただろう――――
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