短編
□旧友 〜さいかい・リクエスト〜
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「―――したがって、本作戦は竜宮島のファフナーを強奪すると共に、島の防衛システムや、その機構を解析し、我々人類が、フェストゥムに対抗する新たな力を得るための、大いなる一歩になる。そのために、諸君の奮闘と、成功を期待する」
人類軍潜水艦内部のブリッジから、ミツヒロ・バートランドの演説が終わる。兵士は、感情が昂ぶっている者もいれば、不安の色を隠せないものもいる。
昂ぶっている者はノートゥング・モデルの性能に魅せられた者たちだ。あれ程の性能を持つファフナーを量産できれば、フェストゥムとの戦いは、文字通り、変わってくる。今まで、物量で押すしかまともに戦える手段がなかったのだ。なんとしてでも手に入れたいと思うだろう。
逆に不安の色を見せる兵士は、あれ程の性能を持つファフナーを、どうやって手に入れるのだと、思っているだろう。確かにあの性能は目を見張るものがある。だが、相手もすんなり渡す訳がない。場合によってはそのノートゥング・モデルと戦闘に入ることになる。
そうなったらどうやって戦うのだ。現在の人類軍は、多対一での戦闘が主だ。それなのに
あのファフナーは、多対多、もしかすれば一対多すらも可能なファフナーなのだ。性能の差は歴然。経験にしても一度戦闘に出て、帰ってくるものなんて少ない。だが、あのファフナーに乗っているものたちは、ほぼ確実に全員が帰ってくるだろう。そうなれば、いくら年下だからといって、むこうのほうが経験地が高い場合も有りうるのだ。勝機はほぼ無いと言って良いだろう。
―――まったく、ノートゥングモデルと戦うだ?とても正気の沙汰とは思えねえ。
かくゆう日野道生も不安を持つものの一人だ。
―――俺は経験や腕もあいつらに勝っている自信は大いにある。だが、それでも俺一人じゃノートゥング・モデル全てを相手にするのはきつ過ぎる。レイやカノンも合わせても正気は40%が関の山だ。実際に戦闘になったらかつ自身はあるが、それは純粋にファフナー同士の戦闘に限る。ノルン何かに出てこられたら御仕舞いうだぜ、まったく。
昂ぶりと不安。その混沌の中で、まったく別のことを考え、行動しているものもいた。
潜水艦内の一室。そこにいる人物は、盗聴不能な暗号プロトコル通信機である人物と会話をしていた。
「―――はい。ふむ……なるほど、分かりました。では可能な限り、調査してみます。……お酒は二十歳の誕生日になった午前0時からですよ。……ええ、分かっていますよ。では」
彼。レイ・ベルリオーズは、受信機を置いて、パソコンのキーボードを叩く。ディスプレイに映し出される映像を見ながら、レイはコーヒーを啜る。
「……これは、予想通りといえばそうなのか。……情報がたりませんね。もう少し収集してから結論を付けるのも悪くはないでしょう」
そういって、また、キーボードを叩き始める。ふと、扉をノックする音が聞こえ、彼はディスプレイを閉じる。
「ベルリオーズ少尉。よろしいでしょうか」」
―――聞こえた声は陳晶晶〈チン・シャオシャオ〉。階級は軍曹。日野道生大尉率いるファフナー部隊の精鋭中の精鋭。僕は断る理由もなかったので、招くことにした。
「どうぞ、陳軍曹。」
「「「失礼致します」」」
……入ってきたのは、陳晶晶だけではなく、ベラ・デルニョーニ軍曹とオルガ・カティーナ・ベトレンコ曹長も一緒であった。
「……どうかしました?3人揃って。ああ、適当に掛けて下さい」
3人は椅子に座ると、3人の中では、まとめ役のオルガがこう言った。
「いえ、たいした御用は有りません。ただ、作戦決行までに、少し時間が有りますので」
「そうですか。まあ、息抜きも必要でしょう。なら、敬語はちょっと止して下さい。実年齢は僕のほうが下ですから」
―――それに僕と貴方達は対等ではないですし―――