D.Gray-man
□Dグレ未来
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13年前、夏……。
―
「頑張って下さい、奥様!」
「……っ、……っ、……ぅ…様……」
「生まれましたよ!元気な………」
その生まれてきた乳児の足を見て、医者は固まってしまった。
乳児の左足は死んでいるかのように、真っ黒であった。
怖くなって声が出てこなかった。
こんなコ、死んでいると同じような存在であった。
「平泉さん?何かありましたか……?」
「女の子ですよ。でも……息……」
「ふぇ、ふぇ、ふぇーんっっ!」
初めは息をしていなかった乳児。
しかしすぐに泣き始め、息をしだした。
このコは生きている。
そして真っ黒な左足もちゃんと動いていた。
「このコ……足が変なんですよ」
「足が…なんですの?」
「左足なんですけどね、真っ黒なんです……」
母親はその乳児の姿を見て言葉を詰まらせた。
信じられなかった。
左足が真っ黒と言う事実に。
思わず抱き上げる。
そして抱きしめた。
「こんな色の足でも、ちゃんと動いてるもの、大丈夫ですわよ」
「ですが奥様…このような足だと大事な城ヶ咲家の跡取りなのに嫁にいけないのでは……」
「いいの。大事な娘ですもの…。あの方の血を半分受け継いでるんですから、それだけで幸せですわ」
大切な人との子供。
大切な人の血を半分受け継いでいる。
それだけで十分だった。
今はこの家にいない、あの人の血を継いでいる娘なのだから。
そのコの温かさを感じていた。
「そうですよね、あの方との娘さんですもんね……」
「このコならお嫁に行かなくてもいいわ。私が一生をかけて大切に育ててあげますから……」
「名前はどうしますか?」
「玲奈……玲奈と書いてレナ、と読ませますわ」
「可愛らしい名前ですね」
「有難う、平泉さん」
乳児はレナ、と名付けられた。
この黒い足は寄生型のイノセンスであった。
それを此処にいる人達は知る由もなかった。
レナは大切に、大切に育てられてきた。
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