BLEACH
□日雛短編集
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「それ欲しい」
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「日番谷君なんて大っ嫌いなんだからね!」
「…勝手にしろ」
十番隊隊舎に訪れて、勝手に怒って勝手に帰る。
いつもだったら日番谷も、少しは雛森の相手をしていた。
しかし今日は忙しくて、相手に出来なかった。
そしたら雛森が怒ってしまったのだ。
「隊長〜いいんですかぁ?雛森怒らせたままで」
「お前がちゃんと仕事してくれりゃ雛森は怒らずに帰らなかったんだよ」
「私のせいって言いたいんですか?」
「当たり前だろ!仕事ほって寝転んでんじゃねーか!」
副隊長である、乱菊の問いかけにも苛立ちが増す。
原因は乱菊であると言うのに本人に自覚はない。
日番谷は立ち上がった。
「…松本」
「はい?」
「此処に積み重ねられてる奴、全部やっとけ」
「何でですかぁっ!」
「雛森の機嫌とってくる。それはお前の罰だ。終わってなかったら氷漬けにすっからな」
流石に氷漬けは嫌なのか、渋々ながら乱菊は書類をし始めた。
日番谷はそれを確認するとすぐに雛森の元へと行った。
霊圧ですぐに分かる。
「なーにやってんだよ、馬鹿者」
「ふわぁぅっ!?」
「変な声出すな。こっちが驚くだろうが」
屋根の上に座り込んでいた雛森に声をかける。
当然のように雛森は思い切り驚いていた。
そして日番谷とは反対の方を向く。
「…さっきのは悪かったよ。構ってもらいたかったんだろ?俺に」
「……だけど忙しいの分かってるから大丈夫」
「そんな顔してねーじゃねーかよ」
無理やり自分の方を向かせると荒く口付けをした。
雛森の目には涙が浮かんでいた。
なので抱き締める。
「欲しいもん言え。今は構ってやれねーからそれまでそれで我慢してろ」
「…じゃあ……」
「あぁ」
「それ欲しい」
雛森が欲しいと言ったのは日番谷が隊長の証である羽織だった。
それをギュッと握っていた。
「…しょがねーなぁ。予備はあるしやるよ、これ」
「本当!?」
「デカくても知らねーからな」
「いいの。日番谷君の温もりを感じたかっただけだから」
「馬鹿桃」
「馬鹿じゃないもん」
羽織を脱ぎ、雛森の肩にかける。
雛森は嬉しそうに微笑んだ。
この数ヶ月かで日番谷の身長は一気に伸びた。
雛森の背はとうに越して、今は乱菊と並ぶほどまで成長している。
「有難う、日番谷君」
「どー致しまして。じゃあ俺は戻っから」
「私も戻らなくちゃ」
雛森はニコニコしながら隊舎へと戻った。
この2人が同じ隊舎で働くようになるまで後少し。
→あとがき