D.Gray-man

□アレリナ短編集
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『大切な宝物』





「な、何ぃぃぃっ!」


信じられないような叫び声が教団に響き渡った。
声の主は勿論、コムイ・リーであった。
リナリーは恥ずかしそうに、そしてアレンはずっと俯いていた。


「ぼ、ぼ、僕のリナリーになんて事してくれたんだ!アレン君」
「すいません、コムイさん」
「リーバー君、アレン・ウォーカーを部屋に閉じ込めて出れなくさせろ」
「はいよ」


怒りに震えるコムイ。
誰が止めようとしても無駄だった。
そしてアレンは自分の部屋に歩いていった。


「やるじゃねーか、アレン」
「な、な、何言ってるんですかっ!リーバーさんっ!」
「アレンがそんな大胆な奴だったなんて知らなかったぜ?オレは」
「違いますよ!リナリーがこうしなくちゃ結婚できない、って泣きついてきたからしょうがなく納得したんです!」
「ほぅほぅ」


アレンは真っ赤な顔をして説得する。
リナリーに泣きつかれてしまえば、誰だって負ける。
リナリーはその事には全く気付いていないだろうが。
アレンはそのまま、部屋に入った。


「兄さんっ!アレン君になんてことしてくれたの!」
「リナリー、君は無理やりされたんだろ?それでアレン君の子供が出来ちゃった、と言う所だろ?」
「違うわよ!アレン君はそんな人じゃない!私が頼んだの」
「どうしてアレンをかばうかは知らないけど、堕ろす事を考えといてね。僕は病院連れて行ってあげるから」
「兄さんの馬鹿っ!」


リナリーの強烈なビンタがコムイの頬に直撃した。
綺麗にコムイは後ろへと倒れていく。
リナリーは涙ながらに部屋を後にした。
そう、リナリーはアレンの子供を妊娠していたのだ。


「どうしたんさ?リナリー」
「何で泣いてんだ?」
「ゴメン、1人にさせて」
「どうしたんさ?本当に」


何処かへと歩いている途中。
リナリーは神田とラビに出くわした。
泣いている、というだけあって心配する2人。
しかしリナリーは歩いて行ってしまった。
今は、1人になりたい。


「コムイは何処だ」
「此処で伸びてるさ。どうしたんさ?コムイ」
「りな、りな、リナリーが……僕の可愛いリナリーが……っ」


フルフル震えながら何度も呟くコムイ。
神田はコムイの胸倉を掴んでいた。
見るからに怖い光景であるが。


(……兄さんの馬鹿)


部屋に戻ってベランダで何度も呟いていたリナリー。
妊娠したい、と言ったのは自分だった。
アレンは勿論、反対した。
コムイに言われるのは分かってた事。
しかしリナリーは貫き通した。
こうでもしないと結婚できない、と。


(アレン君は多分、あの時に別れる、なんて言わなかったら作ってくれなかっただろうなぁ)


先ほどの言葉の後に、作ってくれないなら、別れる、と言ったのだ。
それは流石に嫌だったアレンはしぶしぶ納得した。
それで今、此処にいたる。
本当は気付かれるまで言わないつもりだったが健康診断でバレてしまったのだ。


「…アレン、ちょっと出てこい」
「…なんですか?」


3日ばかし、アレンは部屋にいた。
食事もちゃんと運んできてくれるので文句は特に無かった。
ただ、リナリーに会えない日々が続いていただけだった。


「リナリーの所に言ってくれ」
「どうしてですか?」
「リナリーがこの3日間、飲まず食わずでいるんだ。このままだと胎児にも影響が出てしまうかも知れない」
「…分かりました。でも何でリーバーさんが?」
「オレはアレンの味方だからな。室長のアレには参るよ」
「有難うございます、リーバーさん」


アレンは急いでリナリーの部屋に走っていった。
そしてノックする。


「だぁれ?」
「僕です、リナリー。アレンです」
「アレン君?出られたの!?」
「リーバーさんが出してくれたんです、リナリーが飲まず食わず、と聞いたから」


カチャリ、と音がしてドアが開く。
そこには3日と言う間に少し痩せたリナリーの姿があった。
思わずアレンは抱き締める。


「リナリー、どうして食べなかったんですか。赤ちゃんに悪いじゃないですか」
「だ、だってアレン君との関係をに、兄さんに否定されてすっごい腹が立ったんだもん」
「だからって、赤ちゃんに影響があっても困るんじゃないですか。リナリーと僕の、大切な赤ちゃんなんですから」
「………ぅん」


リナリーの目からは涙が零れていた。
コムイにはリナリーもかなり怒っていたようだ。
アレンを閉じ込めて、そして関係を認めない。
ましてはお腹の子を堕ろそうとまでしてきた。
それが許せなかったようだ。


「で、でも、兄さんはきっと認めてくれない…っ」
「何て言うか…言葉は悪いかも知れませんけど、駆け落ちすればいいじゃないですか、此処から」
「か、駆け落ち?」
「結婚を認めてくれない両親に怒ったカップルが、2人だけで住む場所を変えるじゃないですか。僕らもそれにすれば赤ちゃんだって産める」
「……それは認めないな、アレン君」


アレンとリナリーが声のした方向を向くと、コムイがいた。
ドアを開けた直後に抱き締めていたので、誰でも見れる状態だったのだ。
思わず、アレンもリナリーも黙ってしまった。


「しょうがないから、2人の関係を認めてあげるよ。その代わり、この教団からは逃げ出さない事」
「兄さんっ!」
「コムイさん」


今までにみた事の無いような笑顔を2人は見せていた。
この半年後。
無事に可愛い双子が生まれた。
コムイが溺愛するようになったのは言うまでもない。




―――――――――――――――

アレリナの考えていたネタです。
アレン・リナリー、2人とも付き合ってる事は誰にも言ってませんでした。
でも、2人の雰囲気でコムイを除く皆はうすうすは気付いていたと思います。

それでも、コムイが許してくれるためには、とリナリーが考えた末のことでした。
アレンとリナリーの子供だから、絶対に可愛いはずです。
コムイが溺愛するようにアレンも溺愛します。
アレンは親に可愛がられなかったので、自分の子供にかなり愛情を注いでいます。

リナリーの呆れる顔が想像できたりもします。



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2007年8月6日



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