D.Gray-man

□アレリナ短編集
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今日はアクマが多く、出没した。
だから、アレンもリナリーも同じ場所で共同戦として、戦っていた。
そんな時だった。


「行けぇぇっ!」
「きゃぁっ!」
「リナリーッッ!」


急にブラックホールのような、真っ黒な空間が出来た。
その側にいた、リナリーはそこへと吸い込まれる。
アレンは必死にリナリーの手を掴もうとした。


「…アレン君…っ、死んじゃ駄目!」
「リナリーも、同じです」
「駄目なの!アレン君が死んじゃったら皆が困るもん!」


リナリーの対アクマ武器、ダークブーツ。
その一撃がアレンを襲った。
2人の指は一瞬だけ、触れた。
しかしアレンは飛ばされてしまった。


「リナリーッッ!」


アレンは思い切り叫んだ。
追いつく時間がなく、リナリーを吸い込んだ真っ黒な物体は消え去ってしまった。
アレンの目からは涙が零れ落ちた。





触れた指





「リナリーを何処にやった」
「ケケケケ、女は頂いた。もう少し日を開けてお邪魔するぜ」
「リナリーを返せ」
「女は生きている、この光の玉が光っている限りはな」


アレンの元に思い切り光の玉が投げつけられる。
確かに、光の玉は輝いていた。
そのまま、アクマは消えていってしまった。
今、あのアクマを殺したらリナリーもともに死んでしまうかも知れない。

その場にアレンは泣き崩れた。


『……アレン君?』
「………ごめんなさい、コムイさん」
『どうしたの?アレン君』
「…リナリーを、守れませんでした」


アレンはずっと、一点を見つめていた。
自分が守れなかった彼女。
それが悔しくてしょうがなかった。
一筋の涙が零れ落ちる。
誰よりも一番、アレンが傷ついていた。
コムイは受話器をガチャリ、と切ってしまった。


「室長?どうしたんすか?」
「……ハハ、冗談だよね、アレン君」
「どうしたんですか?コムイ室長、アレンとの通話は切れてます」


思わず座り込んでしまうコムイ。
アレンの一言が今でも信じられなかった。
再び、アレンからの連絡を待つしかない。
こっちから切ってしまったのが悪い。


「……ハハ」


自分だって、思わず笑ってしまう。
幻だと思いたい、夢だと思いたい、今の事を。
ティムがアレンの頬を叩いた。


「…ティム?」


ティムは必死にアレンに伝えていた。
通話しなければいけない事を。
アレンはギュッとリナリーが生きている、と言う証拠の光の玉を握り締めていた。


「もしもし、誰ですか?」
『リーバーだ。室長は倒れこんだ』
「本当にごめんなさい…僕は何も出来ませんでした」
『どうしたんだ?アレン』
「リナリーを、連れ去られてしまいました……」
『リナリーが連れ去られた?どう言う事だ?』
「アクマの何かの攻撃で、真っ黒な穴が開いてリナリーが吸い込まれてしまって……」
『アレンは無事なのか?』
「全身ボロボロで動きがあまり取れないですが何とか……」


話すだけで苦しくなる。
コムイは完璧に座り込んでしまっていた。
現実が理解できていない。
それはアレンも同じだった。


『…アレン、探索部隊は?』
「全滅です…生き残ったのが僕だけで……」
『とりあえず、教団に戻って来れるか?そこで話が聞きたい』
「………」
『アレン?アレン?』


アレンはあまりの痛みに気を失ってしまった。
右肩が折れたように痛かった。
全身がボロボロで、何とも表せない痛みでいっぱいだった。
そのまま、ガクッと地面に倒れこんだ。


「………っ!」


起き上がるとラビと目が合った。
隣には不機嫌な神田の姿もあった。
そしてその隣にコムイ。


「起きたさ?アレン」
「僕が持ってた、光の玉は何処ですか?」
「テメェの隣にあんだろうが。よく見ろ!」
「……良かったぁ」


光の玉は輝き続けていた。
アクマに渡された時と輝きは変わっていない。
思わずそれをギュッと握る。



「…アレン君の言った通り、リナリーの姿は無かった」
「…ごめんなさい」
「ティムの映像では本当に真っ暗い穴にリナリーが吸い込まれてたのが見えたさ」
「モヤシ、お前は悪くはない。あのアクマが悪いんだ」
「でも…僕がリナリーを救えなかった」


ティムの映像記録で事実が理解できたらしい。
アレンは悲しそうにうつむく。
全身の痛みはすでになくなっていた。


「あのアクマの話が本当なら、もう一回、此処に訪れるはずだ」
「モヤシは此処で待機でもしてろ。俺とラビで行く」
「嫌です。僕も行きます」
「本気さ?アレン」
「リナリーを連れてかれた今、僕が助けるしかありません」


3人の決意が固まった。
そして3人はアクマが来るのを待つ事になる。
しかし3人の苛立ちは日が立つごとに増していった。


「ぁ?アクマなんて来ねーじゃねーかよ!」
「ユウ、怒るな。俺だって同じ気持ちさ」
「………リナリー」


ポツリ、とアレンは呟いた。
アレンはあの、光の玉の事を他の人には告げていなかった。
だから、アレンだけがこの事を知っていた。
リナリーは確かに生きている。


『アレン君……』


そんな声が聞こえた。
そして見える、リナリーの姿。
必死に手を伸ばすがリナリーに触れる事はできない。



「……アレン?」
「リナ、リーッ!」
「ユウ!アレン、何か蜃気楼か何かを見てるさ!」
「…俺が一発であの世に逝かしてやる」
「止めるさ!ユウ!」


確かに、蜃気楼だったのかも知れない。
リナリーの姿は透けていて、奥の壁が見えた。
だけど、アレンにはハッキリと声が聞こえた。


『……アレン君?』
「どうしたんですか?リナリー」
「アレン?大丈夫か?」
『1人で私達が戦った場所に来てもらいたいの』
「あそこ……ですか?」
『来週の水曜、夜の12時に1人で来て。神田やラビには絶対に言わないで』
「…分かりました」


確かに聞こえる、リナリーの声。
これは幻ではない、そんな気がアレンにはしていた。
でも、神田やラビには聞こえていなく、アレンだけに聞こえた声であった。


「どうしたんさ?アレン」
「リナ、リナリーの声が聞こえたんです。無事だから、心配しないで、って言う……」
「本当か?モヤシ」
「別に信じなくたって結構です。僕だけがそれを思っておきますから」


心も体もボロボロになりつつあるアレンにとって、2人はすでにどうでもよくなっていた。
リナリーが無事であれば、それだけでいいと思うようになっていた。


「………っ」


アレンは夢をみていた。
自分と、リナリーが教団に居た頃の話だ。


「アーレン君っ♪」
「どうしたんですか?リナリー」
「約束しよ♪」
「…約束ですか?」


突然やってきたリナリー。
そして小指を自分に向かって立ててきた。
不思議そうにリナリーの方をアレンは見た。


「教団以外で死なない、って事」
「どう言う事ですか?」
「だから、アクマと戦ってる最中に死なないって事」
「そんな事約束できるはず……」
「出来るでしょ?アレン君」


リナリーのニコニコと微笑んだ裏にある、黒い部分。
それにすぐに気付くアレン。
仕方なく、アレンもリナリーの真似をして小指を立てた。
するとリナリーはアレンの小指に自分の小指を絡めた。


「何ですか、コレは」
「友紀ちゃんが教えてくれたの。日本での、約束する時にすることなんだって」
「…へぇ」
「ちょっと待ってね、言葉思い出すから」


ユキと言うのは日本から来た、エクソシストの事だ。
神田の彼女らしい。
リナリーは必死にその時に使う言葉を思い出そうとしていた。
見かねたアレンが言い出す。


「…指きり拳万、嘘ついたら……」
「そうそう、それだよ、それっ!」
「リナリーの全てをもーらう」
「アレン君っ!」


顔を真っ赤にして怒るリナリー。
アレンは思わず笑い出した。
あまりにも幸せな自分が此処に居て。
そして幸せそうなリナリーがいる。


「知ってたの?アレン君」
「師匠と一緒に居る時に女性とやってたんですよ。嘘ついたらアレンをわーたす、とか言ってましたっけ」
「何かアレン君、日常でも天秤にかけられてたんだね」
「えぇ、そうですかね。本当に僕を奪おうとした人も居ましたけど」
「え?」
「その前に、師匠が逃げ出したんですよ、僕を連れて」


ニッコリと微笑みながら黒い事を言うアレン。
その姿にリナリーは呆れて苦笑いをしていた。
2人揃って笑いあう。


「……なんだかんだ言って、クロス元帥もアレン君のこと大切に思ってるんだろうね」
「いえ、多分、師匠は僕が居ないと色々と仕事してくれる奴隷が居ないから逃げたんだと思いますよ?」
「もう、アレン君ったら」
「本当のことですよ、絶対に」


笑いあう2人。
確かにアレンは色々な所で役立つ。
だからそこで渡す訳はないだろう。
それにエクソシストでもあるから、アレンは。


「僕がエクソシストじゃなかったら師匠は拾ってくれなかったからなぁ」
「…そっか」
「師匠には勿論感謝してますよ!?色々教えてくれた訳ですし」
「うん、分かってる」


ニッコリと微笑むリナリー。
親が居ない同士、といえば話が合う。
と言うか大体の教団の人は両親はすでに居ない人が多い。


「私、幸せだよ、アレン君」
「僕も幸せですよ、リナリー」
「大好き、アレン君」
「僕も大好きです」


静かに抱き締めあう。
誰もいないから、出来る事。
誰かが居たら、コムイが大変なことになるために出来ない。
今はティムも居ないので出来るのだ。


「……アレンとリナリー、絶対に出来てるよな、ユウ」
「知らなかったのかよ、ラビ」
「ユウは知ってたんさっ!?」
「大分前から気付いてたよ。あれほどまで進んでるとは知らなかったが」
「なーんでユウは知ってたんさっ!?」
「雰囲気」


いつもとは違う、神田の雰囲気。
2人は夜遅くまで、2人について話していた。








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