Dream
□これでも譲歩してるんです
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「葵ちゃん!」
後ろから抱きつかれた。
「あはは、そんな怖がらないでよー」
怖がっているのがバレたらしい。
静かに手を払いのけ、彼の方に顔を向ける。
「···いきなり、抱きつくのはやめてくれませんか?あまり慣れていないので」
いきなり抱きつかれて可愛らしい反応を返す事なんて、私には出来ない。
もちろん臨也さんの事は好きなのだけれど、彼の突発的なスキンシップには未だに慣れない。
「んー、ごめんね?これでも我慢してる方なんだけど」
君に嫌われるのは嫌だし、と彼は呟いた。
「···私が臨也さんを嫌いになることなんて、無いと思いますが」
「・・・っ」
率直に本心を口にした。
嫌いになるはずなんてない。むしろ、嫌われる事の方が怖いんだ。
私のような人間を、臨也さんが“例え嘘だったとしても”好きでいてくれるなんて、奇跡のようなものだ。
「···君って意外と天然だよね」
小さくこほん、と咳払いをする臨也さんが私に向かって言った。
「そんなこと、ないです」
「・・そうかな?」
「・・・思っている事をそのまま言ってみただけです」
言った瞬間、今度は正面から抱きつかれた。