短編

□貴方へ
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「銀時」
そんな優しく自分の名前を呼ぶ声に、俺は振り向いた。
そこには、もうこの世にはいないはずの松陽先生と、幼い頃の自分がいる。
(ここは…夢か?)
そんな自分の考えも無視して、二人の会話は進んでいく。
「松陽先生…俺は本当にここにいていい存在なの?」
「当たり前です!命は大切にしなければならないものなのです」
「何で?俺は…」
そこで銀時は思いあたった。
(ここは俺の過去か)
「命は理屈抜きにかけがえのないものなのです」
「何で?」
「銀時の命は、お父さんとお母さんから受け継いだものです…この意味はわかりますか?」
「?分かるけど…」
幼い頃の自分はきちんと理解出来ていなかったのが、今は分かるような気がした。
「命は驚くほど長い時間のなか、たった一度も途絶えることなく受け継がれてきたからこそ、いまの銀時が存在しているのですよ…これは、奇跡的なことなのです」
「奇跡…」
「そうです。人間にはいろんな違いがありますが、違いを超えて、すべての人の命は等しく大切なのですよ」
「等しく…大切…」
そう呟くと、幼い自分は松陽先生を見上げた。
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