バスケ部

□シェイク!
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「本日の私の御飯は……ハンバーガーとシェイクですっ」

「いちいち報告はいいから早く食べちゃいなさいよ」

友人が呆れながら買ってきたファストフードの紙袋を指差す。

「何よ! いいもんね、君にはポテト恵んであげないんだからっ」

「結構よ。……あ。私、先生に呼ばれてるから」

友人は立ち上がると弁当箱を持って行ってしまった。

「……昼時の中庭に残される私って……」

たまたま給食のない日に昼食を忘れ、買いに出ていたのが問題なのだが我ながら自分を恨む。

「いいもんね! 一人だって美味しくいただいちゃいますっ」

いただきまーす、と声を出し、ハンバーガーを食べ始める。

《……しかし、皆、それぞれのお弁当をエンジョイしてるなぁ……》

羨ましく思いながらシェイクを飲んでいたときだった。

ふと横を見ると同じようにファストフードのドリンクを飲む、少年がいた。

《あ……。黒子くん?》

空色の髪と瞳を持つその少年は同じクラスの黒子テツヤだった。

そちらを見続けていると視線に気がついてか彼がこちらを見た。

「……どうかしました?」

不思議そうに首を傾げ、そう尋ねてくる優しげな少年にトキメかない女子などいるだろうか。

「あ。い、いえ。すいませんでした」

何となく謝り、顔を伏せる。

《今の私、顔赤いんだろうな……》

途端に恥ずかしくなり、慌ててハンバーガーを食べ進める。

「顔赤いですけど、大丈夫ですか?」

「きゃあっ!?」

いきなり目の前に黒子の顔があり、悲鳴をあげてしまった。

「…………」

少し傷ついたような顔をする黒子に慌てて修正をする。

「ご、ごめんなさい。いきなり人の顔が目の前にあってビックリしちゃったの。……本当にごめんね、黒子くん」

そう謝ると黒子は驚いたような表情になった。

「……僕の名前、知ってたんですか?」

「え? まぁ、同じクラスだし……それに……」

「それに?」

興味深そうに彼は先を促す。

《好きな人だから……なんて言えないよね……》

「ううん、何でもない」

隠すように苦笑いすると彼は少し残念そうな顔をした。

「……そうですか……」

彼は視線を下に落とすとスッと立ち上がった。

「隣、座ってもいいですか?」

「へ? う、うん。どうぞ」

いきなりの申し出に驚きつつも頷くと彼は「ありがとうございます」と言って、先程まで座っていた場所から荷物を持って来た。

そして隣にストンと座る。

《何だか、可愛いなぁ……》

同じクラスになったときから思っていたが何だか母性本能をくすぐられる気がする。

「……何ですか?」

「え? ううん、何でもないよ」

「そうですか?」

いまいち納得がいっていない様だったが気にせず、シェイクを飲む。

「……何ですか? それ」

黒子が指を差しながら聞いてきた。

「ん? これ? ストロベリーシェイクだよ」

「苺ですか」

「うん。……黒子くんのは? 何のジュース?」

「僕はバニラシェイクです」

「シェイクなの? 一緒だね」

同じシェイクだったことを嬉しく思い、にっこりと微笑む。

「……そうですね」

「バニラも美味しいよね」

なんとなしにそう言ったのだが何か勘違いされたのだろうか。

彼は自分の飲んでいたシェイクをこちらに差し出してきた。

「?」

「よかったらどうぞ。美味しいですよ」

「…………は、はぁ!?」

思わず大声を出してしまった。

「? 大丈夫ですか?」

「……え? い、いやいやいや!」

《貴方が大丈夫ですかっ!?》

「それで……もしよかったらそちらを味見させてもらえませんか?」

「あ……。うん」

《成る程、ストロベリーが飲みたかったんだね、黒子くん》

一人納得して何も考えず、自分のシェイクを黒子に差し出した。

「ストロベリーも美味しいよ」

「知ってますよ」

黒子はシェイクを受けとると当然のことのように言った。

「…………え?」

「あ。僕のバニラ、どうぞ飲んでください」

固まっている彼女をよそに黒子はストロベリーシェイクを飲む。

「…………。いやいや! 黒子くん!? 知ってるってどういう……」

「言葉のままです。僕、飲んだことありますし」

「え……えぇ!?」

「美味しいです。ありがとうございました。……そういえば、ストロー、換えていませんでしたね」

「…………!」

「今日のところは間接キスで我慢しておきます」

フッと微笑んだ彼は、「失礼します」と言ってシェイク片手に去って行った。

「…………え…………えぇぇ……」

その後、昼休みが終わり、友人が迎えに来てくれるまで動くことが出来なかった。












(……僕のバニラシェイク……飲んでくれなかったんですか?)
(す、すみません……。気がついたらドロッドロでした……)
(いいですよ。気にしないでください)
(そうだ! 今度一緒にシェイク飲みに行こう? お詫びにというか……)
(本当ですか? 是非行きたいです)
(じゃあ、今度絶対行こうね)
(はい。約束です)







――初恋はシェイクみたいに甘く……











あとがき( *`ω´)σ


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