バスケ部

□スマイル0円
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「いらっしゃいませー」

マジバに入るといつもの店員が居た。

客商売だというのに彼女の笑顔は見たことがない。

可愛いのにもったいないといつも思う。

「……黒子? 何してんだ?」

一緒に店に入った火神が不思議そうに黒子を見た。

「いえ……何でもないです」

首を横に振り、レジに並ぶ。

火神も眉をひそめながら黒子に続いた。

「……いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」

無愛想な彼女の接客。

「はい。バニラシェイク、と――」

一旦、そこで句切り、彼女を見ながら言う。

「……?」

不思議そうな彼女に口許を緩ませた。

「スマイルください」

「は……?」

彼女は目を丸くしてこちらを見る。

「黒子!? お前……何言って――」

「火神くん。あっちのレジが空きました」

「っておい! 押すな!」

火神を別のレジに追いやり、再び彼女を見た。

「……」

彼女は固まっている。

「……大丈夫ですか?」

「――っ!? は、はい……」

少し恥ずかしそうに目を伏せた彼女は、バニラシェイクの準備を始めてしまった。

《ダメだったかな……》

多少、落胆しつつ、注文したものが出てくるのを待つ。

「……お会計、失礼します」

レジを打つ彼女がレシートを手渡し、バニラシェイクを差し出す。

「あ、ありがとうございましたっ」

精一杯の笑顔でシェイクを渡された。

「――っ。はい……」

すぐに顔を伏せてしまったので、ほんの一瞬のことだったが、ちゃんと彼女の笑顔は見ることができた。

慌てて席に行き、ため息をつく。

《思っていた以上に……可愛かった》

少し熱くなった顔にシェイクの容器を当てる。

ひんやりと冷たいシェイクを口に含めば甘い味が口の中に広がる。

《……また、頼んでみよう》

一人、微笑みながら、窓の外を眺めた。





















――まるでシェイクみたいな貴女に抱く想いは間違いなく【恋】























『スマイルください』

『また、ですか?』




















――困惑気味に笑う貴女も素敵です
















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