バスケ部

□ミルクティー
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「好きやなー」

放課後、机を挟んで正面に座る今吉が呟くように言った。

何故だか知らないがクラス日誌を書いていると先輩であるはずの今吉が突然教室に現れたのだ。

「何がですか?」

ん、と指差す先には私が飲んでいたペットボトルのミルクティーがある。

「そんな甘いもんの何がいいん?」

「んー……美味しいのもありますけど、可愛いじゃないですか」

ほら、と言ってラベルを見せた。

期間限定で某有名キャラクターのラベルになっているのだ。

「このキャラクター好きなんですよ」

「ほぉ……」

見ているだけで幸せになれるというのはこの事だろうか。

「このキャラクターがええの?」

ペットボトルを手に取り、今吉がラベルを見た。

「はい! この子が好きなんです!」

笑顔で答えると今吉は少し複雑そうな顔をする。

「……好き、なぁ」

ジッとラベルとにらめっこをした後、キャップを開けてそのまま中身を飲み始めた。

「な、何してるんです!?」

ビックリして声が上ずる。

「ワシは好きやないなぁ……。甘過ぎる」

いつものような笑い顔でペットボトルを返された。

《いや、返却されても……》

どうするべきか悩んでいると今吉が立ち上がる。

「ご馳走さん、練習戻るわ」

片手を挙げてから去っていく背中をぼんやりと見送った。

《……先輩、何の用だったんだろう……》

微妙に疑問は残ったが、あまり気にせず日誌を書き進める。

ふと、飲みかけのミルクティーが視界に入った。

キャップを開けて一口飲む。

「……甘い」

どうしてか先程より甘く感じるミルクティーを机の隅に置いた。

ペンを持ち、いざ日誌を書こうにもペンが進まない。

「……ていっ」

何となく恥ずかしくなってラベルにデコピンした。












――甘い甘いミルクティー









『こんなに甘いのはどうしてだろう』


『もっと甘い味を教えたるわ』









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