バスケ部

□素直になれない嘘つき達
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「よし、完成」

放課後、教室に居残りをし、ようやく書き上げた一枚のプリント。

「提出にい――」

立ち上がろうとした時だった。

「よく書けてるやないか」

「……え?」

書き上げたプリントが机の横に立つ今吉の手に握られていた。

「今吉先輩!? いつから……」

「部活来いひんからなー。探しに来たんや」

嬉しいやろ? と言いながら彼はいつも通りの笑顔を浮かべる。

「まぁ、嬉しいと言えば嬉しいですけど……」

とりあえず、プリントを返して欲しい。

そう思い、プリントを見つめる。

「しっかし、偽善やなぁ、自分」

「……は?」

ポカンと今吉を見る。

「よくもまぁ、こんな心にも思ってないこと書けるなぁ思て」

「お、思ってますし!」

慌てて言い返すと彼はより一層意地悪そうに笑う。

「いやいや。思っとらんやろー」

「思ってますぅ」

ふんっと顔を背けた。

「嘘つきは泥棒の始まりやで?」

嘘つき――その言葉に反応する。

今吉の方に向き直った。

「……じゃあ、今吉先輩は泥棒なんですね」

「……何の話や?」

不思議そうに首を傾げる今吉に苦笑いをする。

「……何でもありません」

ジッとこちらを見る彼が呟くように言う。

「自分こそ泥棒なんちゃう?」

「へ?」

聞き返すと笑顔でかわされてしまった。

「何でもないわ」

「……そうですか?」

少しの沈黙の後、今吉が立ち上がる。

「……さて、練習行こか」

「……そうですね」

立ち上がり、ドアへ向かう。

ドアを開けた今吉が手を繋いできた。

「……!」

ビックリして隣を見ると彼は眉をひそめて笑う。

「このぐらいええやろ?」

少し辛そうな笑顔で言われてしまえば、振りほどくことは出来ない。

返事の代わりにぎゅっと手を握れば、彼も握り返してくる。

横目で今吉の顔を見ると少し満足そうな笑顔を浮かべていた。













嘘つきは――











【恋】の始まり……












『好き、だなんて言えるわけない』




『好き、に決まっとるやないか』















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