王子達の日常
□もしもの話
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もしも……何て思ったボクがバカだったのかもしれないーー
《10歳か……》
壁際にしゃがみ込んでボーッとしている藍の前には小さくなった後輩、同僚達が元気に遊んでいる。
[もしも10歳の彼らが一緒に写真を撮ったら?]
《……ボクは……ボクには【そこ】へ入る権利すら与えられない》
普段はあまり気にしないことなのに何故こんな苦しくなるんだろうか。
……否、気にしないように過ごしてきただけだ。
思わず俯いた藍に気がついた1人の少年が壁際へ駆け寄っていく。
「お兄ちゃんもいっしょに遊ぼうよ!」
「え……?」
驚いて顔をあげる藍の目の前にはニコニコと笑っている嶺二が立っていた。
「これから色オニやるんだ! お兄ちゃんもやろ!」
そう言いながら藍の手を引く幼い嶺二に藍が戸惑う。
「ボクは……キミ達と【同じ】じゃないのに?」
「へ?」
不思議そうな顔をする嶺二を見て藍は静かに俯く。
「ごめん……でもボクはーー」
「同じだよ?」
「……え……」
顔をあげれば先程と変わらない笑顔を浮かべる嶺二と目が合う。
「お兄ちゃんとぼくたちはおんなじだよ。ねぇ、皆」
嶺二が後ろを振り向いた。
釣られて嶺二が向いた方を見る藍の瞳に写ったのはそれぞれの笑顔を浮かべる後輩や同僚達。
「ね!」
再びこちらを振り返った嶺二が笑顔のまま同意を求めるように言う。
「……うん」
立ち上がった藍が嶺二に手を引かれながら彼等の輪へ向かって歩いていくーー
ボクにはキミ達みたいな思い出はないけれど……
『これから負けないくらいの思い出を作っていくよ』
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