バレー部

□自覚なし
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「あ、あの!」

「! え? 何、誰?」

突然声をかけられ、振り返ると知らない女子生徒がいた。

「わ、私、2組の井坂です」

女の子は何故か顔が赤い。

「……はあ?」

首を傾げていると彼女は一枚の手紙を差し出してきた。

「こ、これ、月島くんに渡してもらえませんかっ?」

《わっ。ラブレターとかホントにあるんだ……》

可愛らしい封筒に女の子の字で【月島君へ】と書いてある。

思わず感心していると彼女が不安そうにこちらを見ていた。

「だ、ダメ、ですか?」

「え。いいよ。渡しておくよ」

自然に出た言葉だった。

その言葉に彼女は嬉しそうに笑う。

「本当に!? ありがとう。よろしくお願いしま――」

「何してんの?」

彼女の言葉を遮るように立っているのは長身の男子生徒。

「!!」

振り返った彼女が顔を赤くする。

「ツッキー、いいところに」

「……」

一瞬で状況を察したのか月島の表情が曇った。

「この子が――」

「悪いけど、」

状況を説明しようとしたが月島は彼女に向かって冷たく言う。

「君の想いには答えられないから」

「え……」

彼女の表情が暗くなっていく。

「ちょっと、ツッ――」

「行くよ」

流石にひどいと怒ろうとするがそれより先に不機嫌そうな月島に手を引かれる。

「は!? ちょい、ちょい!」






「あんなこと言ったらあの子泣いちゃうでしょ!」

ようやく手を離してもらい、文句を言った。

「あの子が泣こうが関係ないデショ」

月島はまだ不機嫌そうだ。

「冷たい子だな、ツッキーは」

ため息をつくと月島が疲れたように口を開いた。

「……君さ、」

「?」

「僕の彼女って自覚ないよね?」

そう言われて改めて実感する。

「……あ」

「……」

「え!? あ、いや、忘れてたなんてそんなことは……」

慌てて言い訳するが月島には届いていない。

「……手」

「て?」

「繋いで戻るから」

「……ええ!?」

彼からそんなことを言われビックリした。

「……言っとくけど、拒否権は――」

「行こー! ツッキー!」

手を掴んで早速歩き出す。

「ちょっと! そんなに引っ張らないで」

「えへへっ」

ひどいのかもしれないが何故かすごく嬉しかった。














――まだまだ自覚が足りないのです







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