バレー部

□守護
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「蛍ちゃんのことは私が守るよ」

そう言った幼馴染みの君が隣で笑った。

「何言ってんの」

鼻で笑えば彼女はぷくっと頬を膨らませる。

「ホントだもんっ。守ってみせるもんっ」

「はいはい」

軽く流して彼女から目を反らした。

「蛍ちゃん!」

「……何」

ため息をつきながら再び彼女を見る。

「大好きよ」

照れくさそうに彼女が笑い、釣られて僕も笑う。

彼女が僕を守るんじゃなくて僕が彼女を守る――そう、決めていたのに……
















「……」

「ツッキー!」

「っ!?」

ばーんっと言いながらぶつかってきたのはいつも笑顔の彼女。

「……何してんの」

「え? ツッキーがいたからつい、ね!」

「はぁ……」

目を閉じてため息をつけば、瞼の裏に浮かぶあの子の笑顔。

「ツッキーは、さ」

「?」

目を開ければ彼女がいる。

「【私】を通して【誰】を【みてる】の?」

「!?」

「私は私で、誰でもないんだよ?」

彼女は無表情でこちらを見る。

「……」

「ツッキー」

「……何」

「ごめんね」

少し寂しそうに笑う彼女。

「……別に」

思わず目を反らす。

「じゃあ、また部活で!」

「……っ」

笑顔で去っていく彼女から逃げるように反対方向へ早歩きで進む。

《笑顔も……少し寂しそうな顔も、何もかもが……》

似てるんだ、彼女は彼女に――














「……ねぇ」

僕は彼女を名前で呼べない。

「あ。ツッキー」

彼女も僕を【名前】では呼ばない。

「……」

「?」

不思議そうに首を傾げる彼女から目を反らしながら口を開く。

「……さっきは……ごめん」

謝ったが彼女は気にしていないという風に笑う。

「気にしてないよ。大丈夫!」

彼女と違うのはポジティブで誰とも仲良くなれる性格と――

……僕を好きではないということ。

「ツッキー、他にもね、違うんだよ?」

「は……?」

時々彼女は覚ったようなことを言う。

……寂しそうな笑顔で。

「ねぇ、ツッキー」

ぐっと彼女が背伸びをしてこちらを見上げてくる。

「【私】を見てくれない?」

真っ直ぐな彼女の瞳に映るのは動揺している僕の顔――

















――私を見て








『それはワガママな願いですか?』

















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