魔法使い達の日々

□席
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「おはよう、エスト」

「…………おはようございます」

迷惑そうにこちらを見てから授業の準備に戻るエストの隣に座る。

「……何故、ここに座るんですか」

眉をひそめたままエストが言った。

「ダメ?」

「他の席に移動した方がいいと思いますが」

目線を横に反らすエストに釣られ、周りを見ると他の生徒達がこちらを見て何やら話をしている。

「あ……。エスト、注目されるの嫌いだもんね。ごめんね……」

そう言って席を立つ。

「……そういう意味ではなかったのですが……まぁ、いいです」

読書を始めるエストを横目にエストの後ろの席に座った。

「…………何故、後ろに座るんですか」

怪訝そうな顔でエストが振り返る。

「え? だって、前の席じゃ、エスト見えないし」

「僕ではなく前を見るべきでしょう?」

「ここなら前を見つつ、エストも見えるよ」

「……」

疲れたような顔をしてエストが隣を指差した。

「隣に居てもらった方がまだマシです」

「そう? じゃあ、隣座るね」

再び隣に移動する。

「はぁ……もう、勝手にしてください」

諦めたような声でエストが言う。

そのうちに、先生が入ってきて授業が始まった。











「終わったぁ!」

授業が終わり、伸びをして隣にいるエストを見る。

「終わったね、エスト!」

「……えぇ……やっと終わりました……」

疲れ果てているエストに笑顔で言う。

「大丈夫?」

思わず、そう声をかけた。

「……貴女のせいですよ……わからないところを全て僕に聞かないでください」

ため息まじりに言うとエストは荷物をまとめて立ち上がる。

「あ。待ってよ、エスト!」

慌てて立ち上がり、エストを引き留めようとしてエストのマントを掴む。

「なっ!?」
「きゃあっ!?」

バランスを崩したエストが倒れてきそうになったが咄嗟に方向を変え、こちらに覆い被さるように倒れた。

「イタタ……」
「全く……」

ため息をついたエストの顔がかなり近い。

「え、エスト……近い」

「……! い、言わないでください」

顔を赤くしながら恥ずかしそうにエストが言う。

「……すみませんでした」

顔を赤らめたまま、立ち去ろうとするエストの後を慌てて追う。

「待って、エスト!」

「……何ですか? まだ何か?」

「一緒に行こう? 次も一緒の授業だよね?」

「……そうですね」

珍しく素直に頷いてくれたエストを見て嬉しくなる。

思わず腕に抱きついた。

「!!? な、何をするんですかっ!?」

上ずった声でエストが言う。

「エスト! 大好きよ!」

笑顔でエストを見た。

「……わかってますよ……」

ぼそりと小さな声で恥ずかしそうに言うエストと共に学院内を歩く。

























――照れ屋な貴方の代わりに私が想いを伝えるの









――貴女の気持ちは真っ直ぐで僕は戸惑うばかりだ




















『これからもずっと共にあらんことを……』

























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