王子達と日常
□願い
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【明日、ラボに戻って来い。】
パソコン画面に写される無機質な文字。
最近は故障することもなかっため、ラボに行く必要なんてなかった。
呼び出されたということは何か問題が発生したということ。
きっと彼女のことがバレてしまったのだろう。
ため息をつき、パソコン画面を閉じた。
「……ねぇ」
顔を上げ、彼女に声をかける。
「ん? 何、藍ちゃん」
彼女は雑誌を捲っていた手を止め、顔を上げる。
「……笑って」
「え?」
目を丸くしてこちらを見る彼女に真顔で要求する。
「嘘でもいいよ。キミの笑顔が見たいんだ」
「ふふっ。変な藍ちゃん。いいよ。……でもね、私は藍ちゃんと一緒にいられるだけで嬉くって笑顔になるの。だから、私が藍ちゃんに向ける笑顔が嘘なんてないんだからねっ」
得意気にとびっきりの笑顔を浮かべる彼女を見て自然と笑顔になる。
「……ありがと」
心が痛くなるのを感じながらゆっくりと彼女に近づき、彼女を抱きしめた。
《【ニンゲン】じゃないのに心が痛くなるなんて……》
泣きたくなる気持ちを押さえながら彼女を強く抱きしめると彼女はあやすように背中を擦ってくれる。
《……ずっと……一緒にいたかった……》
唇を噛み締め堪える。
《……キミと一緒の未来を夢見ていたかった……》
叶うはずもない夢を自ら嘲笑いながらも、キミとの明日を夢見ているボクはきっと愚かな存在だ。
彼女を抱きしめながらそっと目を閉じる。
――ずっとキミだけが大好きだ――
――永遠に――
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