王子達と日常

□ビーフシチュー
1ページ/2ページ



「んー……今日のメニューは何にしようかなぁ……」

冷蔵庫の中身とにらめっこしながら夕飯を考える。

「はっ! しまった、節電だ!」

慌てて冷蔵庫を閉め、立ち上がる。

「そーだ! 後輩ちゃん達に相談しようっ」

携帯の画面をつけ、後輩の名前をタッチする。

「……あ! もしもし、後輩ちゃん? うん。あのね、相談があって……。あ! そんな深刻な相談じゃなくって、よかったら今晩の晩御飯のメニューを教えてほしいなーって……。……シチュー? ホワイトの? そうなんだ。ありがと! ……うん! スッゴク助かった。……はーい。じゃあ、またね!」

携帯を切って、再び立ち上がる。

「今日のメニューはビーフシチューに決定ですっ」

メニューを決め、エコバッグ片手に家を出た。











「買い物完了っ」

買い物を終え、家へ戻ってきた。

《後輩ちゃんがホワイトシチューくれるって言ってたし、たくさん作るぞー!》

エプロンをして気合い十分、キッチンに立った。










「…………作りすぎた……」

どう考えても給食で配膳されるくらいの量のあるビーフシチューを見て唖然とする。

「……後輩ちゃんに持っていってもらってもこの量……」

先程、来た後輩達は苦笑いをして頑張れと言うとホワイトシチューを置いて少し多めにビーフシチューを持って帰っていった。

「……明日はビーフシチュードリアにして……うーん……ホワイトなら何とかなったかも知れないけどなぁ……」

途方にくれていた時だった。

♪〜♪〜♪

チャイムが鳴った。

「? はいはーい!」

鍵を開け、ドアを開く。

「……よう」

そこには蘭丸が立っていた。

「蘭くん!?」

「なんだよ。その顔は……来ちゃ行けねーのか?」

「い、いえ……そんなことはありませんが……」

「じゃあ、中に入れろよ」

「う、うん。……あ! ちょっ! ちょっと待って!」

入ろうとした蘭丸をギリギリで止めて部屋の中へ戻る。

「は? お、おい!」

《あの量のシチュー見られたら怒られる!》

慌ててキッチンに行き、シチューの鍋を手に取った。

「えっと! どうしよう!?」

「へぇ……なかなか旨そうじゃねーか」

「!! 蘭くん!?」

すぐ後ろに立っていた蘭丸が呆れ声で言う。

「なんだよ。食い物を無駄にしようとしてたのか?」

「ち、違うんだけど……その……作りすぎちゃって……」

「ま。確かにバカみてぇな量だな」

「うぅ……」

思わず俯いてしまうと蘭丸が少し乱暴に頭を撫でた。

「蘭くん?」

「明日、嶺二達にも食わせれば何とかなんだろ」

優しげに微笑む蘭丸の言葉に少し違和感を覚える。

「う、うん……ありがとう……」

《……何で明日なんだろ……嶺二先輩、今日はオフって言ってたよね?》

不思議に思い、首を傾げていると蘭丸に後ろから抱き締められた。

「!? ら、蘭くん!?」

「だから、今日はおれだけにもてなせよ? ……いろいろな?」

「は、はいぃ!?」

上を見上げると意地悪そうに笑う蘭丸がこちらを見ていた。

「あ、あのですね、蘭くん、もてなせと言われても具体的には何をしたら……」

「あ? んなこともわかんねーのか? まぁ、いい。ゆっくり教えてやるよ」

微笑む蘭丸に抵抗など出来るわけもなく、ただ、呆然と蘭丸を見上げていると、不意に蘭丸の顔が近づいてきた。

思わず目をつむると同時に頬に柔らかな感覚が落ちてきた。

「ふぇ?」

「腹へった。早く準備しろよ」

ポカンとしていると蘭丸はクシャッと髪を撫でてからソファーへ向かった。

「……あ、えっ?」

「いつまでボケッとしてんだよ。早くしろ」

リビングからの蘭丸の声で我に返る。

「は、はい!」

慌てて夕食の準備を終え蘭丸と同じ食卓を囲んだ。


















あとがき⇒



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ