王子達と日常
□ビーフシチュー
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「んー……今日のメニューは何にしようかなぁ……」
冷蔵庫の中身とにらめっこしながら夕飯を考える。
「はっ! しまった、節電だ!」
慌てて冷蔵庫を閉め、立ち上がる。
「そーだ! 後輩ちゃん達に相談しようっ」
携帯の画面をつけ、後輩の名前をタッチする。
「……あ! もしもし、後輩ちゃん? うん。あのね、相談があって……。あ! そんな深刻な相談じゃなくって、よかったら今晩の晩御飯のメニューを教えてほしいなーって……。……シチュー? ホワイトの? そうなんだ。ありがと! ……うん! スッゴク助かった。……はーい。じゃあ、またね!」
携帯を切って、再び立ち上がる。
「今日のメニューはビーフシチューに決定ですっ」
メニューを決め、エコバッグ片手に家を出た。
「買い物完了っ」
買い物を終え、家へ戻ってきた。
《後輩ちゃんがホワイトシチューくれるって言ってたし、たくさん作るぞー!》
エプロンをして気合い十分、キッチンに立った。
「…………作りすぎた……」
どう考えても給食で配膳されるくらいの量のあるビーフシチューを見て唖然とする。
「……後輩ちゃんに持っていってもらってもこの量……」
先程、来た後輩達は苦笑いをして頑張れと言うとホワイトシチューを置いて少し多めにビーフシチューを持って帰っていった。
「……明日はビーフシチュードリアにして……うーん……ホワイトなら何とかなったかも知れないけどなぁ……」
途方にくれていた時だった。
♪〜♪〜♪
チャイムが鳴った。
「? はいはーい!」
鍵を開け、ドアを開く。
「……よう」
そこには蘭丸が立っていた。
「蘭くん!?」
「なんだよ。その顔は……来ちゃ行けねーのか?」
「い、いえ……そんなことはありませんが……」
「じゃあ、中に入れろよ」
「う、うん。……あ! ちょっ! ちょっと待って!」
入ろうとした蘭丸をギリギリで止めて部屋の中へ戻る。
「は? お、おい!」
《あの量のシチュー見られたら怒られる!》
慌ててキッチンに行き、シチューの鍋を手に取った。
「えっと! どうしよう!?」
「へぇ……なかなか旨そうじゃねーか」
「!! 蘭くん!?」
すぐ後ろに立っていた蘭丸が呆れ声で言う。
「なんだよ。食い物を無駄にしようとしてたのか?」
「ち、違うんだけど……その……作りすぎちゃって……」
「ま。確かにバカみてぇな量だな」
「うぅ……」
思わず俯いてしまうと蘭丸が少し乱暴に頭を撫でた。
「蘭くん?」
「明日、嶺二達にも食わせれば何とかなんだろ」
優しげに微笑む蘭丸の言葉に少し違和感を覚える。
「う、うん……ありがとう……」
《……何で明日なんだろ……嶺二先輩、今日はオフって言ってたよね?》
不思議に思い、首を傾げていると蘭丸に後ろから抱き締められた。
「!? ら、蘭くん!?」
「だから、今日はおれだけにもてなせよ? ……いろいろな?」
「は、はいぃ!?」
上を見上げると意地悪そうに笑う蘭丸がこちらを見ていた。
「あ、あのですね、蘭くん、もてなせと言われても具体的には何をしたら……」
「あ? んなこともわかんねーのか? まぁ、いい。ゆっくり教えてやるよ」
微笑む蘭丸に抵抗など出来るわけもなく、ただ、呆然と蘭丸を見上げていると、不意に蘭丸の顔が近づいてきた。
思わず目をつむると同時に頬に柔らかな感覚が落ちてきた。
「ふぇ?」
「腹へった。早く準備しろよ」
ポカンとしていると蘭丸はクシャッと髪を撫でてからソファーへ向かった。
「……あ、えっ?」
「いつまでボケッとしてんだよ。早くしろ」
リビングからの蘭丸の声で我に返る。
「は、はい!」
慌てて夕食の準備を終え蘭丸と同じ食卓を囲んだ。
あとがき⇒
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