王子達と日常

□害虫
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〈翔ちゃん! 助けて!〉

電話越しに聞こえてきた彼女の危機迫った声。

現在の時刻は午前3時30分を回ったところ。

「待ってろ! すぐ行く!」

嫌な予感を感じた俺は急いで電話を切った。

そして隣である彼女の部屋へと合鍵を使って入った。

「大丈夫か!?」

慌ててリビングに入ると彼女はキッチンで青い顔をしていた。

「しょ……翔ちゃん……」

俺を見た瞬間、涙目になるあいつ。

「どうした!?」

俺がキッチンに行くとあいつは口をパクパクさせながら一点を指差した。

「へ……?」

彼女が指を指した方向、そこにヤツは、居た。

彼女が動けないのをまるで嘲笑うかのようにそこでじっとしている。

「翔ちゃん……助けて……」

雑誌を丸め、目を潤ませ、震えながら立っている彼女。

「……任せとけ」

彼女から雑誌を受け取り、彼女をリビングの方に行かせようとしたがそれは断られた。

「ちゃんと次からは自分で出来るようにちゃんと見てる……!」

そう言って拳に力を込めているあいつはすごく可愛かった。

《――って! 今はそれどころじゃねーんだよ!》

慌ててヤツを見たがヤツはまだそこに居た。

《……ぜ、ぜってーカッコイイところ見せてやる!》

覚悟を決め、ヤツにとどめを刺した。





「本当にありがとう……それからこんな時間にごめんなさい……」

お茶を出し、申し訳なさそうに頭を下げる彼女に俺は笑顔で答える。

「いいって。俺らパートナーだろ? 気にすんな。……それに頼ってもらえてちょっと嬉しかったし……さ」

頬をかきながら言うとあいつは嬉しそうに笑った。

「よかった……こんなことで呼び出して本当に悪かったと思って……怒ってるかと思ったから……」

「俺がこんなことで怒る訳ねーだろ? ってか、あんな危機迫った電話が来てかなり焦った」

「ご、ごめんね……。寝ようとしてコップ片そうとしたら……居て……。慌てて雑誌持って戻ったらまだ居て……どうしようって思ったら翔ちゃんに電話かけてたの……」

「そっか。ま、あんな死にそうな顔してたら怒る気も失せるけどな」

「うぅ……ホント、ごめん……」

顔を赤らめながら「今度、バルサン焚こう」と決意を新たにする彼女を横目にお茶を飲む。

「その時は翔ちゃんの部屋に泊まってもいい?」

その後、盛大にお茶を噴き出したのは言うまでもない。







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