王子達と日常

□学校
1ページ/2ページ


僕はその日、翔ちゃんに会いに行った。

「……早乙女学園か」

本当は僕も通う予定だった。

倍率200の超難関の学園だけど僕なら合格できたはずだ。

それが試験当日、熱を出して受けられなかったなんて。

一緒にデビューしたかったけど今更そんなこと言っても仕方ない。

熱を出した僕が悪いんだから。

そんなこともあって今は別の夢を追うため、早乙女学園系列の医療学校に通っている。

「早く翔ちゃんに会いに行こう……」

ため息をつき、正面玄関を目指して歩き出す。

玄関を入った時だった。

「あれ? 来栖くん?」

声に反応してそちらを見るとそこには女の子が立っていた。

「何か……雰囲気違う?」

その子は不思議そうに首を傾げ、こちらを見る。

《僕と翔ちゃんを勘違いしてるのか……》

間違えられることはけっこうあり、煩わしく思うこともあったが双子なのだから仕方ない。

だが、最近、こういうのはなかったので少し嬉しかった。

「僕は翔ちゃんの双子の弟で来栖薫。今日は翔ちゃんに会いに来たんだけど、どこに居るかわかる?」

笑顔でそう尋ねると彼女は驚いたような顔をしたがすぐに笑顔になった。

「そうだったんだ。来栖くんなら教室に居ると思うよ。案内しよっか?」

「本当に? ありがとう、助かる」

「どういたしまして」

案内をするためにこちらに背を向けた彼女が突然振り返った。

じっとこちらを見つめる。

「どうかしたの?」

苦笑いでそう尋ねると彼女は新しい発見をしたかに様に嬉しそうに笑った。

「笑顔が違うね」

「え?」

「来栖くんの笑顔は見ているだけで笑顔になれるような笑顔だけど貴方のは安心できるようなそんな感じがするの」

「……そう?」

「うん! それに、貴方の方が少し背が高いみたいだね」

「……」

「どうしたの?」

彼女が首を傾げると髪の毛が愛らしげに揺れた。

「……何でもないよ」

無垢に笑う彼女に見とれていたなんてまさか言えるわけない。

「そっか。じゃあ行こう!」

元気良く歩き出す彼女の後ろをついていく。

《……通ってみたかったな……》

彼女の後ろを姿を見て小さくため息をついた。















ただの嫉妬だと思ってたんだ。翔ちゃんと同じ場所に居れる彼女が羨ましいだけだと……
















――僕らの想いが重なるのはまだまだ先のこと















あとがき⇒

.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ