王子達と日常

□優勝…
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「美風先輩!」

歌を聞いて急いで藍の楽屋へ向かった。

「……美風……先輩?」

椅子に座っている藍に話しかけてみる。

しかし、藍は頬杖を付き、目を閉じている。

「美風先輩……起きてください……」

どんなに揺さぶっても藍の体勢は変わらない。

『今回の歌謡祭、優勝者は美風藍さんです!』

「ほ、ほら、美風先輩、呼ばれてますよ? 行かないとですよ?」

どんなに声をかけてみても目を覚まさない。

「何でですか……美風先輩……」

ぺたんとその場に座り込んだ。

「藍は限界だったんだよ」

顔を上げるとドアのところに博士が立っていた。

「全く……しょうがない奴だったな」

ため息をついて藍に近づく。

「美風先輩を……どうするんですか?」

不安になり、思わず尋ねる。

「……君は知らなくてもいいことだ」

「ど、どうしてですか!? わたしは美風先輩のパートナーで――」

「ごめんね」

トンっと首の後ろを叩かれた。

カクンと膝から崩れ落ちる。

「美風……先輩……」

薄れていく意識の中、藍に向かって手を伸ばしたがその手が藍に触れることはなかった。

ただ、今自分が泣いていることを認識しながら闇の中へ落ちていった。














藍を探しにきたスタッフに起こされ、目を覚ましたがもうそこには藍の姿はなかった。

ただ一枚、紙切れが残されていた。

【ありがとう……ごめんね】

綺麗な彼の字で書かれた紙を残し、藍は姿を消した。















――大切なキミ。
ごめんね。
ボクにはこれしか手が浮かばなかったんだ。
ボクはキミの中で生き続ける、
キミを守り続けるから……
キミがこれからも輝けるように。

ずっとずっとキミだけが大好きだ。

Bye-Bye My dear...

















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