王子達と日常

□招き猫
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「……何してんだ?」

楽屋に戻ってきた蘭丸が呆れた顔でこちらを見る。

「今日は招き猫の日なんですよー」

招き猫のポーズをして蘭丸へ振り返った。

「……はー」

呆れた顔のまま蘭丸は頭をかく。

「あっ。興味ない……?」

「興味ねぇ」

素っ気なく言葉を繰り返した蘭丸に駆け寄った。

「招き猫は右手が金運で左が人を招くんですよっ」

そう言いながら猫の手のまま、右手と左手を交互に上へ挙げる。

「……」

「先輩?」

左手を挙げながら首を傾げた。

「右だけ挙げとけ」

そう言うと右手首を蘭丸に掴まれ、上へ挙げられる。

「へ!?」

「いいか、頭より上に挙げんだぞ」

グーっと更に上へ伸ばされる。

「ちょっ!」

痛くはないが少し背伸びになる。

「……」

じっと普段より近い距離で蘭丸に見つめられた。

「もしかして……いじけてます?」

「……何でだよ」

ふいっと視線を反らされる。

「……あの、」

「何だよ」

こちらを見ないままの蘭丸に笑顔で言った。

「誕生日、おめでとうございます」

「……あ?」

驚いた顔の蘭丸に照れ隠しするように笑う。

「えへへ」

「……」

「? 先ぱ――」

グッと掴まれていた手首を更に上へ伸ばされ、同時に蘭丸の顔が近づく――

「!」

ふわりと一瞬、キスをされた。

「ありがとな」

まだ近い位置で蘭丸が笑う。

「ど、どういたしまして……です」

恥ずかしくなり、思わず俯くと右手首がパッと離された。

顔をあげると蘭丸に優しく頭を撫でられる。

「……おまえは本当に招き猫みてぇだな」

「……え?」

「うしっ」

「ひゃあ!?」

今度は両手で乱暴に撫でられた。

「な、何するんですっ!?」

お陰で髪がグシャグシャだ。

ムッとして蘭丸を見ると対称的に蘭丸は笑っていた。

「大体、招き猫ってどういうことです」

「おまえは幸も不幸も本当に何でも招いてくるからな」

「不幸もって……」

それはあんまりです、と言おうとしたが、言葉を発する前に蘭丸が優しげに言う。

「お陰で今は楽しく過ごせてる」

「……ぇ」

「これからもよろしくな」

優しく笑う蘭丸に満面の笑顔で頷いた。
























何でも招く招き猫――


『これからも可愛がってやる』
























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