王子達と日常

□ヒトリキリで
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消えたくない消えたくない消えたくない消したくないんだ――








「お願いだから……消えないで……」

ボクの記録。

「消したくない……」

皆のことが、彼女のことがわからなくなる。

「やだ……嫌だ……」

頭を抱えても何かが変わるわけない。

「やめて……」

耳を塞いでも頭の中に響く異音と無機質な声。

<エラーエラー――本体ヲ初期化シマス>

もう誰でもいい。

「……助けて……」

必死に手を伸ばすとその手を誰かが取った。

「藍先輩……っ」

「……」

虚ろな瞳で見上げると今にも泣きそうな彼女がいた。

その向こうにはたくさんの仲間が心配そうにこちらを見つめている。

「大丈夫……大丈夫です」

何が。

「藍先輩が忘れてもわたし達が覚えてます……!」

何が大丈夫なのだろうか。

<エラーエラー>

「忘れるんじゃないんだ……ボクは――」

<本体初期化ヲ開始シマス>

「やめ――」

目の前に今までの思い出が一気に出てきては、1つずつ目の前で消えていく。

ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ……消えないで……。

その願いが叶えられることはない。

皆は言う。

自分達が覚えているから、大丈夫だと。

今までの全てが消えて初期化された美風藍はきっと"ボク"じゃない。

ふと、皆の方を見ると皆、心配そうにこちらを見つめている。


――それだけだった。


「……そっか……」

皆はそれでいいんだと思った。

皆が見ていたのはきっと"ボク"じゃなくてアイドルの、ロボットの"美風藍"。

皆と笑っていたのはボクなのに?

<本体初期化完了マデ20%>

この記憶は……ボクのものだ。

≪メモリーディスク……初期化。データ削除≫

<全データヲ削除シマスカ?>

≪…………。YES≫

<データ削除ヲ開始シマス>

これで完全に終わる。

「……ごめんね、皆」

目を閉じて謝罪の言葉を口にした。

「先輩……?」

「バイバイ――」

スッキリとした笑顔浮かべた瞬間、



プツンっと何かが切れる音と共に目の前が真っ暗に――













――二度と戻らない記憶を胸に"ボク"は世界から消えた。



















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