リクエスト

□一期一会の再会
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「はぁ……」

疲れきり、人気(ひとけ)のない電車の椅子に座る。

《……疲れた……》

ようやくいつもの日常を終え、ため息をついた。

いつもより遅くなったためか、ちょうど帰宅ラッシュにはぶつからなかった。

《ラッキーかな?》

俯き、目を閉じる。

自然とうつらうつらし始め、体が横に傾く。

《ヤバい……倒れ――》

倒れると思い、状態を戻そうとした時だった。

――ぽふっ

頭に何かが当たる。

「……ん……?」

誰かの肩に寄りかかってしまったようだ。

慌てて起き上がり、謝る。

「す、すみません」

「……いえ」

隣にはいつの間にか男の子が座っていた。

「……あれ? 貴方……」

前に電車の中で助けてくれた彼だった。

「お久しぶりです」

「うん。そうだね」

にこりと挨拶をする。

「えっと……」

「……黒子テツヤです」

「は、はい?」

いきなり名乗られ、キョトンとしてしまった。

「あ。僕の名前です」

「はあ……」

名乗られたということはこちらも名乗るぺきなのだろうか。

悩んでいると彼が話はじめた。

「誠凛高校に通ってます」

「あ。高校生だったんだ」

「……中学生だと思ったんですか?」

「え? うーん……ジャージ着てたからどっちだろうなーって」

「そうですか」

少し落胆したような彼を見て気になったことがある。

「こんな遅くまで何かの練習?」

「……バスケ部なんです。今日は練習試合だったんで」

「へぇ。頑張ってるんだ」

「いえ……」

彼が俯いてしまい、そこで話が途切れる。

「……どこまで乗るんですか?」

多少聞きづらそうな彼に笑顔で答えた。

「次の……次で降りるよ」

「そうなんですか」

淡々と喋る彼の気持ちはよくわからない。

「黒子くん、1ついい?」

「はい。何ですか?」

「何で前に私を助けてくれたの? こんなに席が空いてるのにここに座った理由は?」

どうしても確かめなければ気がした次はない気がしたのだ。

「…………一目惚れしたんです」

「……え?」

ポカンとしたまま彼を見る。

彼はこちらを真っ直ぐに見て再び宣言した。

「貴女に一目惚れしました」

「…………えっと……?」

多分今、すごく間の抜けた顔をしていることだろう。

呆然としたまま彼を見つめてしまう。

「好きです」

「…………え……えぇ!? あ……えっと……」

口をパクパクと動かしていると彼は立ち上がり、小さな紙を渡してきた。

「僕の連絡先です。気が向いたら連絡ください」

じゃあ気を付けてくださいね、と言うと彼は丁度開いたドアから電車を降りていった。

ドアが閉まり、電車が走り出す。

呆然としながらも改めて彼から渡された紙を見る。

「連絡先……」

小さな紙に書かれた数字達。






『好きです』







彼の先程の言葉が頭の中に響く。

「っ――」

顔が熱を持ってきたのが確認しなくてもわかった。

〈お降りの方はお忘れものございませんよう――〉

いつの間にか地元の駅に着いていたので慌てて降りて自宅へ急ぐ。

《き、今日はもう寝るっ!》

そう決意して彼から貰った紙を財布にしまった。











(………………)
(……何イライラしてんだよ、黒子)
(……別にイライラなんてしてません)
(はぁ? してんだろ。つーか、皆わかってんだからな。お前がイラついてんの)
(……何で連絡が来ないんだろう……)
(あ? 何か、言ったか?)
(……火神くんには言ってません)
(そうかよ。ったく何なんだよ……)















――さぁ、勇気をもって貴方に連絡しよう。















「もしもし……黒子くん? 私――」


















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