いつまでも

□4話 考え方
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 その日の夕方。縫われた布は、なんとか形になった。
「籠はどうすんだ?」
「作ればエエやん、お前が」
「俺が!? 手伝えよ」
「やだ」
 そこで、バアさんが大きな籠を持ってきた。
「里で1番大きな籠を持ってきたよ。この籠に竹や葦をつぎ足せば、作業も早いじゃろ」
「くれるのか、悪いな」
「いやいや…。実は…、アンタたちに折り入って頼みがあってね。閨様と八重を連れて行ってほしいんだよ」
「八重はエエとして、なんでやねん」
「いいのかよ。悪いが、それはできねェな。軽罪人とはいえ、罪人を島から連れ出すことは犯罪だ」
「それなら心配いらないよ。2人の刑期は、とっくに終わってる。閨様は、ただわしらを…、特に子供たちを心配して、島に残っただけじゃ。子供らの中には、親のいない子も多い。受け入れる所もなく、ここにしかいられぬ子らじゃ。八重は、口数は少ないんじゃが、子供たちのことは気にかけてくれとる。2人とも心優しい方じゃからのぅ。今までは敵もおって、わしらも頼ってしまっていたが…、里のためにずっとがんばってくれたんじゃ。1日でも早く2人を自由にしてあげなければ――」
 その時、ねーちゃんが弁当を持って姿を現した。
「ばあや、どうしてそんなこと言いますの? 里の人や、子供たちを見捨てて、自分だけ逃げるようなことはできませんわ」
「しかし…」
「私たちは家族ですのよ。無理してでも助けるのは当然じゃありませんの」
「無理してでも助けるのは当然? なら、里の人間が我慢して、お前を出て行かせるのも当然ちゃうんか?」
「それは…、でも、それじゃ子供たちのためになりませんわ」
「子供のため? じゃあ、一生島に閉じ込められて、面倒見てもらうことが、子供にとっての幸せか?」
「そ…そうとは言いませんけど…。…ここ以外行くところがないんですもの。それが私にできる精一杯のことですわ」
「決めつけんのは早いんちゃう? あるやろ、他にできることがいくらでも…。ガキ共には、教養も資金も居場所もない。ないなら作ったればエエねん」
「それって、つまり…」
「さ、里を作れって言うんですの!? む…む、無理ですわ! そんな…何から始めていいかもわからない! なんの知識もないんですのよ!?」
 いちいち結論出すのが早いのォ。どっかの誰かとは違うて。
「『無理してでも助けるのが家族』なんやろ?」
「それとこれとは話が別ですわ! やっぱり行けませんわ。結局、置いていくことに変わりませんもの。子供の中には親に捨てられた子だっている。もう置いていかれる気持ちにさせたくないんですの…。だから、ばあや。もう気にする必要なくてよ。みなさんもお元気で」
 森の中に、ねーちゃんは姿を消していった。
「…行っちまったな。どーするんだ?」
「どーするもこーするも、部外者のワシらが出ることやないわ。あとは、アンタらの問題や。ばーさんも頼むなら、ワシらやのうて、ねーちゃんと八重にするんやな。船が完成するまでに、約7日。それが期限や」
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