恋物語最終章・秘めた恋心

□4話 突然
1ページ/2ページ

 夏休みが終わり、各クラスが文化祭の準備に追われ、みんながてんやわんやしている時にそれを見つけた。

 隠し撮りされた数枚の写真が靴箱の中に入っていた。

 裏返しにして手に取り、すぐにスカートのポケットに突っこむ。写された場所は、更衣室と教室の一角の二か所。アングルに至っては、斜め上。後ろ。下など多彩だ。
 授業が終わって給食を食べようとした直後、頭上から牛乳パックの中身がぶちまけられた。けらけらと至近距離から耳障りな女子の高笑いが耳に入る。定時制の生徒の中でも最も性質の悪い不良だ。
 まあ、前世で『鬼ヶ島の鬼』と呼ばれた長曾我部さんとは比べ物にならないくらいザコだけどな。…汚れてもいい私服だからいいものを。
「この女、牛乳くさくね?」
「みんな、黒崎さんに近づかないようにしようね?」
 遅れて、こつんと頭に軽い衝撃をくらい、教室の床に当たった。それは、今しがた攻撃する武器だった牛乳パックだった。
「片づけといてね」
「ゴミ箱だから、片づけなくてもいいんじゃない?」
「そうだった。あははっ」
 盛りヘアとケバ女が嗤いながら、静まり返った教室から去っていく。
 せっかくの給食を食わないのかよ。
「低能の二人が何をやるかと思ったら、たったこれだけ? あほらしい」
 鼻で笑ったことで、彼女達は顔を醜く歪めた。隣の席の還暦を過ぎた年配の方が、威厳を持って不良を叱った。それでも舌打ちし、反省の欠片もない。


 学校がなく、バイトが休みの日。
 あたしは自宅近くのカフェでディナーを食している時、猿飛先生が、夏休みと同様チャラい格好をして来店した。ここで待ち合わせているため、あたしの目の前の席に座った。
「…なんかあった?」
「う…」
「担任教諭に言えないことでもあるのか?」
 なぶり箸にして、数日前の靴箱に入っていた写真を、裏返しにして手渡す。くるりとそれを見て、彼は表情を消した。
「先日、靴箱に入ってたの」
「…そうか」
「猿飛さん。前にも、やっかみ買った人いた?」
「お前も知ってるように、翼ちゃんだろ。あと、独眼竜の奥方様・音ちゃんもそうだったな。ま、昔の学園新聞を見れば分かる。それと、これは預かっておくよ」
「黒幕が分かんないもんな〜。それまで職員会議を開かないで」
「それは、できない相談だ。世間も教師に不信感抱いてるし。でも、理事長がその気になれば、退学言い渡せるけど」
「やだ。自分の力でなんとかする」
「きつくなったら、いつでも相談に乗るよ」
「はいよ」
 頭をなでられて、猿飛先生。もとい猿飛先輩は、やっとメニューを注文した。品が来るまでの間に、小さな紙切れを渡した。
「はい」
「なにこれ?」
「かすがの連絡先。彼女も紅のこと、心配してるから」
「…ありがとう」
「ちゃんと報告するんだよ」
「了解」
 そこから、あたし達はディナーを楽しんだ。


→佐助side
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ