恋物語第壱章・複雑な想い
□プロローグ
1ページ/2ページ
一目惚れ。
その言葉を、今まさに知った。
話を数分前に戻そう。
退屈な入学式が終わった教室の自分の席に座って、ぼーっと窓の外に広がる青空を眺めていた。
そこまでは、普通に良かった。
問題というか事件が起こったのは、次の瞬間だった。
そう。気軽に声をかけられたんだ。
「俺とおそろいだな」
そこで、初めて彼を見た。
ドッグタグを首に下げ、インナーを適当に着崩し、学ランの袖をまくり上げて両手首に長めの黒いリストバンドを身につけた、鉄製の眼帯をした端正な男子生徒がいた。
一目で、『あ、この人不良だ』とわかったし、前述の通り、惚れた。
一瞬、何を言われているのか理解できなかった。数秒の沈黙の間に、こつこつと自分の眼帯をつついてみせた。
「右目の eyepatch」
「…ああ、これ? 偶然だね」
医療用眼帯を、そっとなでる。
「入学早々、ケガでもしたのか?」
「んー、まあ、そんなところ」
「遠近感ないだろ?」
「うん。でも、慣れてるから」
オッドアイとは言えない。そのせいで、小学生の時にさんざんイジメられたし。まあ、兄の影響もあってか中学で不良になっていたが、そのことは一部の人にしか知らない。
担任の先生が入ってきて、自己紹介が始まった。前の席の彼が、けだるそうに立ち上がった。
学ランの背に刺繍された模様が視界から消え、ヒップバンク気味のズボンからゴツめの青いベルトと、銀のキーチェーンが自然と見えた。
「伊達政宗だ。Baseball club に入る。そこですぐに ace number を取って、甲子園に行く。それが、俺の goal だ」
すとん、と音がして、自分の順番が来たことを知った。
「次、長宗我部」
無言のまま、席を立った。
→政宗side