恋物語第壱章・複雑な想い

□4話 勧められたのは
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 梅雨明け前の昼休みにぐったりと机に突っ伏していると、伊達くんに質問された。
「game やったことあるか?」
「No.」
 すると、すでに起動してあるラベンダー色のPSPを手渡され、伊達くんは蒼の同じものを鞄の中から取り出した。
「history で、この前赤点とっただろ? そこの『BASARA』のアイコンを選択しな」
「うん。で、なに?」
「game で克服する作戦だ」
 かちかちと慣れた手つきで操作し画面を眺めている彼の瞳に、得意げな表情が垣間見えるのは気のせいだろうか? ゲームを始める前の動画が軽快な音楽と共に開始された。
「おお、すごい。…あれ?」
 やたら見覚えのある顔が画面上に表示されて、首をかしげる。
「伊達くん。これって…」
 にやりと口端を吊り上げて耳打ちした。心臓に悪いよ!

(全員の記憶を base に作ったんだ)

「…え?」
「ちなみにスタジオ借りて、声も本人たちがあてた」
「ええっ!?」

 全員の記憶をベースに作った?

 スタジオを借りて、全部本人たちが声をあてた?

「うそだろ〜?」
「初心者だから、武将選択で真田幸村を選べ」
「うん」
 操作説明を受けながらBASARA技が扱えるようになって、戦場を駆け抜ける紅いわんこ…じゃない。六文銭対独眼竜とのバトルを、至近距離の画面上で繰り広げていた。
「火焔車!」
「phantom drive!!」
「ぎゃー、また負けた!」
 うつむいて肩を震わせたまま、歯ぎしりして激しく足踏みする。
「そんなに負けるのが嫌か?」
「Of course!!」
「手取り足取り、俺が教えてやろうか?」
「お願いします」
 売られたケンカは野郎どもが相手でも買ってきて全勝した……と言わない代わりに、頬を膨らませる。
「level up して俺にかかってきな。相手するぜ」
「ふぎーっ! いぎゃいお!」
 笑って頬をつねる彼に、さっきまでくやしさに支配されていた気持ちが和らいだ。
 正直、おもちゃにされるのは勘弁だけど、『一緒にいたい』って思う気持ちにはとうてい勝てないみたい。


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