恋物語第壱章・複雑な想い
□8話 不快感
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文化祭が終わっても、最大級の難関が残っている。それは、兄の不機嫌なツラだ。その様子を傍から見ておろおろするが、隣にいるかすがは知らん顔だ。
「俺が答えを出すまで音に手ぇ出すんじゃねえぞ!」
「OK. 誓うぜ」
鬼と竜が真剣な顔でしっかりと向き合い、あたしの前で男の約束する。
「じゃあ、またね。政宗くん」
「bye, 音.」
兄のバイクの後部座席に乗り、複雑な気持ちで下校する。電車じゃなくて、兄さんのバイクに乗って家に帰るなんて何年ぶりだろう?
信号で止まっている時に仰ぎ見た大きくたくましい後ろ姿は、どこか寂しげだった。
「音」
「ハイ?」
「竜のこと、いつ好きになったんだ?」
「…入学の後。自分で言うのも恥ずかしいけど、一目惚れだったの」
舌打ちは――しなかった。
ぎり、と唇を噛みしめるが前から聞こえた。
「…そうか」
てっきりあんな形で告られたから、怒っているのかと思っていた。
「発進するぞ」
「うん」
再び腰につかまって、マンションに着いても一言も言葉を交わさなかった。
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