傍に…

□1話 黒羽一行
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 烏頭目が泥だらけで帰ってきて、風呂に入るためにすっぽんぽんになり、黒羽のメガネにヒビが入ったのと俺が硬直したのは同時で、これで2回目だ。
 すぐに際刃が、ハリセンで烏頭目の頭をひっぱたく。
「なんでだよー。薫も一緒に入ろーぜー」
「できるか!!」
 反省の色が、まったく見えない。
 男装しているのに加え、胸の大きさも控えめなので、男に見えてもしかたがない。


 風呂からあがると、烏頭目の勉強につきあってくれと際刃に言われた。別に断る理由もないので、大福を作ってから勉強をしている部屋に向かう。
「どーだ? 進み具合は」
「終わった!」
「そうか。ほら、大福食べていいぞ」
「やったー」
 おいしそうに作ったばかりの大福を頬ばる烏頭目の表情に、ほほえんだ。
「薫ってさー、蝶左と同じ髪型だよな」
「前髪だけな」
 それから一緒に会話していくうちに、烏頭目は最後の大福のひとかけらを口に入れたまま、眠ってしまった。
「あーあ、眠っちゃったか」
 彼と頭一つ分低い俺は、半ば引きずるようにして、寝る前にすべきことを全てやってから、蝶左と万田のいる部屋に連れて行った。
「え、何? ここまで薫1人で、コイツ連れてきたワケ?」
「…ああ」
 万田は、いびきをかいて寝ている。一つ布団をはさんだ先に、行灯をつけて読書をしていた蝶左が、布団に寝かせるまで手伝ってくれた。
「お疲れ」
「ん」
 ぽんぽん、と、頭をなでてくれる。小さい頃から、この頭ぽんぽんで和んできた。
「あたし、もう寝るね。おやすみ、蝶左」
「おやすみ」
 黒羽には、女であることを知らせているために彼らと一緒の部屋で寝ている。あたしが女だと知らないのは、万田と烏頭目だけだ。
「まだ起きてたのか」
「誰かさんが、烏頭目の勉強につきあえって言ったからね」
 黒羽たちから少し距離を置いた場所に、自分の布団が敷かれてあった。
「ありがと、際刃」
「どういたしまして」
 布団にもぐりこんで、そのまま眠りについた。

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