いつまでも

□5話 本土
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「空さんって、孤児の里で育ったんですのね。参考までに、仕組みとか役割とか聞きたいですわ」
「せやなあ…、うちは大人6人しかおらんかったし、1人1人が多才やったからなァ。ジジィは、ガキ共に学問教えたり、里管理したり、他のおっさんは狩りだの、大工だの、たまに入れ替わって、ガキを狩ったり、イノシシに学問教えたり、悪人が来たときは、スーパージジィに変身や」
「変身すんのか!?」
「八重、騙されるな!!」
「さらに! 大人6人が合体すると奇跡の超巨大爆破ジジィにー! がおー!」
「きゃー」
「ぎゃー、こえー!」
 ぽちを腕に抱えて、震えあがっとる八重を見て爆笑した。
「ところで閨。前にも言ったが、俺は里に入るこたできねェぞ」
「そんな、困りますわ」
「いや、困られても困る。俺には、やらなきゃならねェことがある。本当に困った時には手を貸してやるが、できることはそこまでだ」
「そんな…」
「のう、ぽち。お前のオカンって、どないして化けてたか知っとるか?」
 八重の膝に頭のせて、腹の上に乗っとるぽちに聞く。
「いいえー。お母様は、普段普通の姿をしてましたからー」
「さよか。んじゃ、ぽち。ちょお、じっとしとれよ。あの狸が言っとったやろ。『その子には、まだ化ける条件がそろってない』て。んで、考えたんやが…、あいつ顔に包帯巻いとったやん。あいつのあの姿は、過去にあった人間の誰かをマネたんやろうが、誰にでも化けられるヤツが、わざわざあない包帯ぐるぐる巻きに化けとるほうが変や。つまり! 化けれる条件ちゅーんは、包帯!」
 薬馬の持っとる箱から包帯を取り出して、ぽちに巻いたんやが、なんも変化あらへんかった。
「おねーさまー」
「お…おねーさま?」
「オイぽち、ねーちゃんは別に家族やあらへんぞ」
 ねーちゃんは、『いいんですのよ!』と言いながら、ワシの頬を押した。エエぞー、もっとやれー。八重の太ももの感触が、気持ちエエねん。
「あの、空さんは頭、よろしいですよ〜。お里にどうですか〜」
「え?」
「あー? まあ確かに学問くらい簡単に教えられるけどな」
「い…っ、いいえ! 無理ですわ! あなたに教わることなんてありませんことよ!」
「空…。子供にものを教えるってことは、単に知識があるだけじゃダメなんだぞ。たとえば、その子たちの手本となれるような立派な――」
「わかっとるわ、アホウ」
「空、教えてくれ。最低限の知識がほしいんだ」
「エエぞ。最低限やのーて、いろいろ教えたるわ」
 よほど嬉しかったんか、ばんざいしとる。目標追加せなアカンな。『八重に、ぎょーさん知識を与える』。よし、決まりや。
「んで、空。ちなみに今どのへんだ? オレとしちゃ本土は本土でも、できれば都に近い所に――」
「は? 知るか、ワシに聞くなや」
『え?』
「…どういう意味だ。お前が航路を決めてたんじゃねェのか?」
「アホぬかせ。火の調節で上下はできても、方角なんて決められるかい」
「なっ!」
「じゃあ、まったく見知らむ場所へ来てしまったのかもしれませんの!?」
「下はどうなってるんだ!?」
 風が、眼下に広がる雲を吹きのかした。
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