光の奏でる旋律
□09 ケセドニア北部戦
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ジゼルと別れて、教団内をぶらついていたら、前方に赤毛を見つけた。
「アッシュー!!」
「リートか。フォニック文字の勉強中じゃなかったのか?」
「んー?必要ない」
「必要ないって…てめぇ…」
「重そうだね?半分持つよ」
「あ、あぁ」
アッシュに追い付き、手元を覗き込むと、かなりの高さの書類があった。
危ないバランスを保っているそれの上半分を取り上げて、同じように抱えて隣を歩く。
「なになにー?『教団本部内器物損壊』?こっちは『建造物損壊』?」
持っている書類の上のものを読んでみる。何やら始末書のようなものみたいだ。
「勝手に見るな」
「『罪状…音素灯・装飾品の損壊、神託の盾騎士団兵の傷害』
……あぁ、こないだのアレね!アッシュが神託の盾兵に石投げたやつ!」
「あれはお前が避けたから……字、読めんのか?」
「これでも頭は良いんだからね。もう覚えたよ」
元の世界でも勉強はできたし、フォニック文字がアルファベットに似ているお蔭で、思ってたよりも簡単に読めるようになったのだ。
「読めるなら手伝え!!お前が壊した分の始末も俺がやってんだ!
ヴァンは知ってるのか?」
「知らないと思うよ?昨日『フォニック文字初級編』を持ってきてくれたばっかだし」
ちなみに、その前は初見編と初心者編だった。そういうと、アッシュは呆れたように脱力した。
「どうしてヴァンに黙ってる?言えばそれなりの仕事を任せてもらえるだろう」
「始末書書きたくないからに決まってんじゃん?あ、これはヴァンには内緒ね!」
「……」
せっかくの頭をもっと活用しろよ、と呟いていたアッシュだが、リートにそのつもりはない。むしろ、どうやって活用すればいいんだよ?
しばらく2人で並んで歩く。
目的地はヴァンの執務室だったが、奴はそこにはおらず、書類だけ机の上に置いてきた。部屋を出たリートにアッシュが問いかける。
「リート、お前この後何するんだ?」
「えっと……(フローリアンたちのところに行きたいんだけど…)」
まさか、本当のことを言う訳にもいかない。返答に迷ってると、ちょうどアリエッタがライガに乗って現れた。
「リート…見つけた、です」
「ライガ?…あの導師守護役か」
「そう。どうしたのアリエッタ?」
アリエッタがリートの前で止まる。
「イオン様が呼んでる…です。アリエッタと、一緒に来て」
「行く行く!ってことで、またねーアッシュ」
「おい!……いっちまいやがった…」
リートはアリエッタと一緒にライガに股がって去っていった。
アッシュはリートを訓練に誘うのは諦めて、一人で訓練場へと向かった。
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