光の奏でる旋律

□05 身体検査
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イオンの私室を出てから、リートはヴァンの後ろについて、ただ廊下を歩いていた。

ヴァンによると、これからリートの身体検査をするため、研究室へ行くらしいのだが、研究室で身体検査をするとか…なんか怖い。

リートは別になんともないから検査はいらないと言ったが、ヴァンからどうしてもと言われ、受けることになった。


因みに、アッシュは任務で今日は留守らしい。





廊下を何度か曲がったり、階段を下ったりすると、随分と重厚な造りの扉が見えた。

どうやら、そこが目的地の研究室らしく、ヴァンは扉の前で足を止めた。



「いいか、リート。今から会う人物には、いくら本心だからといえ、あまり傷つくことは言ってはいけないぞ」


え、何その発言…
むしろそれは全ての人間に対して言えることじゃなかろうか?
髭豚はきっと例外、否…髭と豚だからそもそも人ですらなかったね

てか、中にいる人どんな人だろ…


「なんで言っちゃいけないの?」

「少々傷つき安い奴だからな…周りから無視されることもしばしば…
何か機嫌を損ねさせて、検査が受けられなくなるのも面倒だ。馴染みにくいが、腕は確かなのでな」


ますますどんな人か気になる。


きっと凄腕の研究者なら、眼鏡で白衣を羽織っているだろう。
それに、研究室に籠って研究ばかりしているから、色白で細い体躯。常に研究対象を探すキツい瞳。さらに、学者らしく丁寧な言葉使い…


リートの中で勝手な人物像ができあがった。


「……まぁ、想像はできたから、大丈夫だよ」

「そうか?なら、行くぞ」


ヴァンは扉をノックし名乗ると、返事も待たずにそれを押し開けた。


「ヴァンですね。準備は出来ています。さっさと検査を済ませてしまいましょう。私も自分の研究に忙しいのでね」


部屋の中は、何かの機械や資料などがところ狭しと並べられていた。

そして、ドアの向こうにいた彼はこちらに背を向けて何やら操作をしていて、振り向くことなくそう言った。


……この後ろ姿、顔を見なくてもわかる。


操作していた機械の画面がパッと暗くなる。
彼は座っていた椅子ごと、ようやく振り向いた。



「ディスト!?」

「おや?リートではありませんか!!
ヴァンの言っていた異世界からの来訪者とは、貴方だったのですか!」





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