光の奏でる旋律
□09 ケセドニア北部戦
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「おーい」
ある日、たまたまダアト内をうろついていると、廊下の先に久しぶりに見る人物を見かけた。
手を振りながら、駆け寄ると、その人も笑顔で振り返してくれた。
「リート、久しぶりだね」
「マルセルも久しぶりー」
手を降った彼は、以前彼女がオールドラントに来たときにお世話になったマルセル・オスローだ。
どうやら誰かと話をしていたらしく、金髪の綺麗な女の人が「彼女は?」とマルセルに聞いた。
「あぁ。彼女が前に話したリートだよ」
「はじめまして。総長閣下直属のリートです」
「ジゼル・オスローだ」
「前に話した僕の姉だよ」
リグレット!!リグレットじゃん!!
握手したいけど、譜銃で蜂の巣にされるのはやだな…
一時はリートに笑顔を向けたリグレットことジゼルだったが、すぐにマルセルに向き直る。
どこか険悪な雰囲気にリートのほうが少し戸惑う。
「あー…なんか邪魔しちゃった?」
「そんなことないんだけど…あ、そうだ。リートにも聞いてほしいな」
え…この険悪なオーラを華麗に纏うジゼルと一緒に?八つ当たりとかとばっちりとか、こないよね?
でも、ここは聞いておくべきだと思えたので、一つ頷いてマルセルの話に耳を傾ける。
「二日後のヴァン総長が指揮するケセドニア北部の戦いに行くことになったんだ」
「だが、マルセル…」
「姉さん、この戦いに行けば教団を改革できるんだ。ヴァン総長がそうおっしゃったんだよ!」
「しかし…」
「これは僕の夢なんだ。教団をより良い方向に導く――ヴァン総長はそれができるお方だ!
リートはそう思わないかい?」
「へ?私?」
うわー…ここで私に振りますか
ジゼルの視線が刺さりそうです…
「私は、ホントはあんまり行ってほしくはないんだけど、マルセルの好きなようにすればいいと思うよ。総長は人望と髭だけはあつい人だし…」
特に髭が。
「そうだよね、僕もそう思うよ。ヴァン総長はとても人望が厚くて、すごい人だよ」
あ、髭はスルーですか?
その時、廊下の向こうからマルセルを呼ぶ声が聞こえた。
「あぁ!今行く!
じゃあ姉さん、リート、また!」
手を振りながら、甲冑をガチャガチャいわせて、マルセルは走っていく。
ジゼルは心配そうな顔でマルセルを見送った。
「私も戻るが…」
「仕事?お疲れさま」
ジゼルも仕事中だったようで、戻っていった。
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