光の奏でる旋律
□17 軍人の街
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あれから歩くこと暫く、道中多少魔物に襲われる事はあったものの、一行は難なくセントビナーに到着することができた。しかし街の入り口には神託の盾兵が張っており、簡単には街にはいれてくれなさそうな状況。
少々困り気味な雰囲気に、私が一言言ってこようか?と提案するも、ジェイドに却下された。曰く、他の六神将が出て来たら厄介、なのだそうだ。
と、入り口の様子を窺っていたティアが声を上げた。
「大佐、あれを……」
エンゲーブからだという馬車が一台街に入って行った。神託の盾兵も荷台の検査はしていない。
後から来るもう一台に乗せてもらう為エンゲーブへの街道を下り始めると、程なくして馬車が街道を通りかかった。ルークがその前に飛出し、馬とも似つかない魔物に引かれた馬車を止める。この魔物、鳴き声は馬なんだよね。
「その馬車、止まれ!」
止まった馬車の御者には見覚えがあった。
「カーティス大佐じゃないですか!それに確か……ルークだったかい、旅の人。リートちゃんまで、どうしてここに!」
「こんにちは、ローズさん。実はいろいろ訳ありで、馬車に匿って欲しいんだけど……」
「セントビナーへ入りたいのですが、導師イオンを狙う不逞の輩が街の入り口を見張っているのです。ご協力いただけませんか」
馬車の御者ローズさんと目が合うと驚かれた。それがまた意外だったようで、ジェイドがローズさん説得の陰で聞いてきた。
「ご存じで?」
「エンゲーブに知り合いが住んでてさ、よく遊びに行ってたんだ。その時にお世話になってた人だよ」
「過去形ですか」
「その人、もう引っ越したから」
「そうですか」
妙に納得したように頷くとジェイドは何も聞かなくなった。フランツたちのことは知らないはずなんだけど、彼らの正体まで詮索されたようで変な感じがする。つくづく怖い人だと思う瞬間である。
「いいさ、泥棒騒ぎで迷惑をかけたからね。お乗りよ」
「助かります」
「それとリートちゃん、フランツに会ったらいつでも帰ってくるように言っといておくれ!家はちゃんととっておくからってさ」
「ありがと。伝えとくね」
「……彼氏ですか?その人も物好きですね」
「ぶっ潰すぞ、死霊使い」
馬車の荷台に乗せてもらい、一行は無事にセントビナーへ入ることができた。
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