大きな陽だまり

□第一話
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「始業式には全員がまたここに集まれるように!ルールはよく守ってすごすんだぞー
じゃあ、良い夏休みを!」




きりーつ、れい、ありがとうございましたー




一学期最後のホームルームが終わった。


挨拶もそこそこに教室を飛び出す生徒や、山積みになった荷物をせっせと片付ける生徒で一気に教室が騒がしくなる。


「あぁーー!!やっと終わったー 」


私、登川 秋那の後ろでも嬉しそうな声があがった。

振り向くと、やはり腕を突き上げて喜びを表現している友の姿。


「ねぇ、秋那ー。どこっか遊びに行こーよー
せっかくこうして日々の勉強地獄から解放されたんだから、初日にパァアっとさ!
祐香も誘って、一緒に!」


喜色満面の笑顔で私を遊びに誘った彼女の名前は前原 幸。サッチーの愛称で親しまれている彼女を一言で表すなら、『元気活発な美少女』だ。
勉強よりも運動の方が得意で、その運動能力は一年生にしてバレー部のレギュラーに選ばれてしまう程だ。


「でも幸、部活は?」

「う…」

「夏休み合宿とかあるんでしょ?初日からサボって大丈夫なの?」


そういうと、幸はだってぇ〜、と唇を尖らせた。



「え?何々?何の話?」


荷物の詰まったカバンを持ち、会話に加わってきた彼女は立原 祐香。クラス1の成績優秀者なのに勤勉じゃないすごい少女だ。
真っ直ぐな長い黒髪が綺麗なこちらも美少女。



「せっかく学校終わったんだし、皆で遊びにいこーよ!!って話」


「それいい!私さーちょっとみたい映画があるんだー。それ見に行かない?」


「えー!祐香って怖いものばっか観るじゃん!ホラーって、あたし苦手…」


「サッチーは恐がりだもんね〜」


「ち、違うよ!ただ…そう!秋那が見たくないだろーなーって思って!
秋那は何見たい?」



話をふられて秋那は片付けの手を止めた。



「ごめん…今日はちょっと…」

「えー何で?まさかデート?なら許す!」

「私も許す!」

「違うよ2人とも。今日はお父さんたちが帰ってくる日なんだ!早く帰っていろいろ準備したいから」


そう。今日は数ヵ月に一度の両親が帰国する日なのだ。
秋那は家族の揃うこの日をずっと待ち望んでいたのだった。


「パパさんたち、帰ってくるの!?確か、海外に転勤中だったよね?よかったじゃん!
じゃあ、そういう理由でも、許す!」

「でも、カレシができても私に報告ね!」

「あたしにも!」

「そんなの、できる訳ないじゃん!2人もちゃんと報告してよね。
じゃ、良い夏休みをー!」

「はーい!たまにはメールしてよねー」


幸と祐香の2人と別れ、秋那は一足先に教室をでた。




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