◎デジモン長編◎

□U話
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 今、サンゾモン一行は、はじまりの街を出たところである。

 ユイはサンゾモン一行の仲間となり、一緒に旅をすることとなった。
 お師匠様こと、サンゾモンとそのパートナーセイヤ。それとゴクウモンにユイ。この4人でこれから次のエリアへと向かっていた。

 先頭を歩くサンゾモン、その斜め後ろにセイヤ。そしてユイとゴクウモンはその2人に着いていくように歩いていた。

 次のエリアといっても、どこにたどり着くか、分からない。
 ただ、今は東に向かって旅をしていた一行。
 それには理由があった。




―――――



 はじまりの町をでる前のこと。



サンゾ「こちらこそよろしくお願いします、ユイさん。」
 サンゾモンとセイヤに仲間になると伝えにいったユイ。サンゾモンは快く歓迎してくれた。

セイヤ「決めてくれたんだね。これから辛いこともたくさんあるだろうが、一緒に頑張ろう。」
 セイヤもまた、ユイを快く向かい入れてくれた。
 こんな歓迎してくれるとは思わなかったらしく、ユイは少し照れくさそうに笑った。その反面、不安もあった。

サンゾ「改めて、私(わたくし)はサンゾモンと言います。私(わたくし)のことは、気軽にサンゾモンとお呼びください。」
セイヤ「私はセイヤです。呼び方はご自由に。」
 それぞれ、軽い自己紹介をする。

セイヤ「なにか分からないことがあったら、私やサンゾモンに色々聞いてください。私達はもう仲間ですから。」
ユイ「は…はい。」
 仲間、そう言われてみてもすぐには実感がわかなかった。
 第一は追っ手から逃げることであり、身を隠すこと。
 だが、みんな優しい人ばかりで自分の立場がどうあるものなのか見失いそうになってしまう。
 このような歓迎というのは、ユイにとって過去一度もないものだった。
 必要。
 サンゾモンに言われたこの言葉はどこかモヤモヤするキーワードである。
 利用、とも受け取ってしまう。
 過去の経験上、色々な面で警戒してしまう。そう育ってしまったからだ。
 だが、それは違った解釈であり、本当の"必要"という2文字だった。
 言えば、サンゾモンやセイヤ、ゴクウモンの言葉言葉に助けられ今、この新たな生きる道を見つけてもらった。
 やはり、この人達には感謝しなければいけない面がたくさんあった。
 仲間、になることで自分の罪を洗い流せたら。
 新しい本当の自分を見つけれたら、とこれからの旅に先に誓う。
 一番に決めたのは、セイヤのある言葉であったが、それはまたの機会。





サンゾ「そうと決まればユイさん、早速、この街を出ましょう。」
ゴクウ「今すぐにか?」
 ユイの後ろで、手を組みながらゴクウモンがその会話に混ざる。

サンゾ「はい、ユイさん。今、私(わたくし)達の旅の目的は遥か東の彼方にある"Vaーメントエリア"に向かっているんです。」
ユイ「Vaーメントエリア?」
 Vaーメントエリア、それは聞いたことのない場所だった。

サンゾ「そこで私(わたくし)達はある人物に会うため、Vaーメントエリアに向かっているのです。」
ユイ「会うって…誰に?」
 そう聞き返すと、サンゾモンはなぜか黙り込んでしまった。
 セイヤも気まずそうに、軽く顔を背けた。
 予想もしない反応にユイは戸惑った。

シーン

 場がなぜか重くなった。
 いけないこと聞いちゃったかな、と少し後悔していた。





ゴクウ「秘密、らしいんだとよ。」
ユイ「えっ、秘密…って…。」
 その空気を破ったのは、ゴクウモンだった。
 秘密、とはどういうことなのか。
 しかしその言葉のおかげか、サンゾモンとセイヤもきっかけを見つけ、繋げて説明し出した。

サンゾ「…実はその人物から、私(わたくし)達の他に仲間が加わった際、自分達の正体を一切言わないでくれ、と言われたのです。」
ユイ「言わないって……名前とかですか?」
セイヤ「個人情報にも満たない情報も言わないでくれ、とのことです。いるということは言っても良いらしいんですが。」
ユイ「…なんか、すごい複雑な感じですね。」
 気まずい雰囲気は少し取れたようだが、逆に謎は深まってしまった。


ゴクウ「まあ、その人物の所に行くってことだ。」
サンゾ「実際、ゴクウモンも知りません。その方達は怪しいものではないので、心配しないでください。」
セイヤ「それに、その人物は、私達の味方です。安心してください。」
 少し納得できない。
 それに、怪しくなくても心配してしまう。
 安心もできない。


 よくある、見るなと言われたら見たくなってしまうあの法則だ。
 その人物とは何者なのか、その人物は私のことを知っているのか、分からない。
 もしかしたら、私のことやこの世界を…。
 人物は、自分みたいな存在をどのように見ているのだろうか。

 複雑だな……不安が増えていく。

ゴクウ「ユイ。」
 ゴクウモンに名前を呼ばれる。
 一見、怖そうに見えるがとても優しく自分を心配してくれたデジモンだ。
 不安な顔するユイに声をかけた。
 ニッと口元が上がっているのがわかる。
 そして口を開く。

ゴクウ「俺も知らない、なら行ってその目で確かめようじゃねえか。2人が教えねえなら自分達で見るしかないんだ。不安とかたくさんあるけどな、俺もそんなもんだよ、旅は色々なことがありすぎて大変だ。でもな、たくさんの出会いや出来事がある、それが楽しいんだ、旅ってえのは。あんま暗く考えんな、つらいことがあったら仲間を頼ってほしい。少しずつ、少しずつ…な。」
 今まで、心の中で思っていたことを全て解決に導く言葉だった。
 思いすぎて返しに困った。
 でも雰囲気的に返さなくて良かった、自分が分かっているならそれで良いと。
 そう思った。

 少し2人は申しわけなさそうな顔をするが、仕方がないこと。
 人の秘密を守る口の堅い2人はとても他人思いだということを知った。


 私は全て、納得した。
 みんなと一緒に旅をしようと。
 自分のするべきことをしよう。



サンゾ「では、行きましょう。」
 目指すはVaーメントエリア。



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