薄桜鬼

□真実
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「さ、入って」


ある部屋の前まで来て、井上さんがその部屋の戸を開ける。


「おはよう、昨夜はよく眠れた?……みたいだね。顔に畳のあとがついてる」


そこには男たちが集まっていて、その中には昨夜出会った男三人もそこに居た。


私はニヤニヤしながら見ている青年と顔を合わせる事が出来ず、顔を本日二度目反らした。


たぶん、私の顔は耳まで真っ赤だと思う。



やっぱり”彼”に疑似している青年を真っ向から見る勇気がなかったから。


「よせ、総司。本気にしている。畳の跡などついちゃいない」


斎藤と呼ばれる男は表情一つ変えずに淡々と言う。


「ひどいな、一くん。ばらさなくてもいいのに」


「お前ら!無駄口ばっかり叩いてんじゃねえよ」


「は〜い」


「で、そいつらが目撃者?」


青年の後ろで顔だけこっちを向いている少年がいた。


歳は少年とあまり変わらないぐらいだろう。


「ちっちゃいし、細っこいなー。まだガキじゃんそいつ」


少年は私の横に立っている少年に向かって、己とたいして変わらない事を次から次へと言い出した。


「お前がガキとか言うなよ、平助」


「だな、世間さまから見ちゃお前も似たようなものだろうよ」


隣の若葉色の鉢巻をした屈強な男が平助という少年の頭をくしゃくしゃと触った。


「うるさいな!おじさん二人は黙ってろよ!」


「なんだと、このお坊っちゃまが!」


また、鉢巻を巻いた男がくしゃくしゃと頭を触る。


「お前に、おじさん呼ばわりされる覚えはねえよ。新八はともかくこの俺はな」


さっきまで、鉢巻を巻いた男と一緒に少年をからかっていた晒しを巻いた男はすぐに手の平返した。


「てめえ!裏切るのか佐乃!!」


「よさんか!三人とも!!!」


ふざけあっていた三人に、真ん中に腰かけていた男の怒号が飛ぶ。


「口さがない方ばかりで申し訳ありません。怖がらないでくださいね」


温厚そうな眼鏡をかけた男が申し訳なさそうに喋った。


「ま、そこ閉めてお座りなさい」


男に言われるままに少年は戸を閉め、私たちは座った。


「俺は新選組局長近藤勇。山南君が総長。そしてこっちのトシ……いや、土方歳三は副長をつとm「近藤さん!!なんで色々教えてやってんだよあんた!」ま、まずいのか……?」


「これから詮議する相手に自己紹介はないんじゃないの?」


「まあ、そのくそまじめなところが近藤さんらしいっちゃあらしいんだがな」


近藤さんが眉を寄せ、一つ咳払いをする。
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