薄桜鬼

□真実
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     02〜真実〜





「おやおや、土方さんが脅かすから気を失っちゃったじゃないですか」


青年はしゃがみ、意識を手放した少年に触れようとする。


チャキ――――


『その手をどけろ……!』


私は刀をその青年の手の甲につき当てる。そこから鮮やかな血が手の甲を伝って地に滴り落ちて行く。


青年はその傷などなんとも感じてないか、はたまたそのような傷は痛くもかゆくもないと挑発してるのか、だが、そんなこと私はどうでもよかった。


私はその青年を見下すように睨みつけ、青年はおもしろそうに私を見てにたぁと口元を上げる。


「きみは、アレを見て気絶しないんだね?」


青年はニヤリと笑いながら私を見つめる。


『あんたが言うアレを見たからにはこいつも私もどうせ殺すんだろ』


私は気絶している少年を首で示した。


「抵抗すれば……斬る」


『この状況で抵抗しないわけないだろ』


私は負けじと睨みつけ、鼻で笑ってみせる。



「だったら……斬るよ」


男の気迫なのか、威圧なのか、たぶん両方だろう。


それほどまでに私を殺人鬼のように睨むソイツは背筋が真っすぐになるほど私は恐怖を感じた。




その時は、まだ暗くて見えなかったから抵抗できたんだと後になって思う。





ちょうど、雲に隠れていた月が青白い光を放って姿を現す。



その光が徐々に男たちを照らしていくと、共に顔が明確にはっきりしてくる。








たぶん、神様は一人ぼっちの私に最高の”出会い”を授けたんだと思いたい。









『あっ――――……







蘭……―――ま……る??……






生き…て…いたのか……―――?』








月明かりに照らされたソイツの顔があまりにも疑似していた。


前髪の癖も、眉の形も、目の形も、肌の色も


髪型さえ除けば後は、蘭丸そのものだった。



それほどまでに似ていたから。



私は何かにとりつかれたようにソイツに近づく


後、数センチとの間で、私はまた真っ黒な世界に引きずり込まれた。





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