薄桜鬼

□夜空
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      05〜夜空〜



お天道様が私の頭の上にのぼりつめるころ、私は中庭で刀の素振りや衰えていた体力を鍛えていた。



一応平隊士として扱われてる身だ。鍛えるたり刀の素振りは当たり前だろう。



『はあっ!』



私は空へ大きく弧を描いて投げた木を見事に切り落とした。



『うん、なかなか』



私は真っ二つに切った木を拾い、切れ目を見て満足する。



そこへ



「刀の稽古か」



一がやってくる。



『あ、うん。体力とか諸々衰えてたからな。必死に前の感覚を取り戻してるんだ』



額に掻いた汗を拭うと、また稽古にはげむ。



すると



「まだ巡察までに時間がある。俺と相手をしてほしい」



すっと私と向かい合わせに立ち、刀を鞘から抜くと構える。



『別にいいが……どうしたんだ?』



「織田信長の側近を務めていたお前の腕の実力を知りたいだけだ」



一の目の色が変わる。同時に私もその目を真っ直ぐ見つめる。



『あ、そう……』



私は不敵に笑い、鞘から刀を抜く。



「では……『「参る!!」』



その場に音が途絶える。風の音も虫の音も



この場に緊迫した空気だけが流れる。



お互いに中段の構えをし、一が足に力を込めた一瞬だった。



「はああ!」



先制をかけたのは一で、私に目にもとまらぬ速さで向かってくる。



横に振られた刀を私は刀で押さえ、弾き、ぶつかる。



ぶつかるたびに鳴る金属音が五月蠅い。



お互いの刀が弾き飛ばされたとき、勝負は決まる―――!



!!――――



一はもう片方の刀をあの一瞬で抜き、私は懐の短刀を両者の喉元に突きつけていた。



『……引き分けか』



「ああ、そうだな」



そう言うと、お互い刀を拾い鞘におさめる。



「さすが、織田信長の側近を務めてただけはある。一撃一撃が重かった」



『一もな、凄い速さだった。あの私があんたの刀を見切るのが精一杯だった。あんたとならいい稽古相手になりそうだ。今度は私が誘うから相手しろよ』



そう言ってほほ笑むと一も「ああ」と言ってほほ笑んだ。


「はいはい、二人とも剣の稽古はそこまで」



『そ、総司?!いつから……』



突如姿を現わした総司に目を見開く藍。



「いつって……最初っから。気づいてなかったの?」



首をかしげる総司に私は唖然と佇んでいた。



『お前、絶対ただ者じゃないだろ』



「当たり前じゃない?そんなことにも気付かないきみは僕に勝つのはまだまだ遠いね」




「それより、総司。お前俺たちに用があったんじゃないのか?」



「ああ、そうそう。巡察の時間だよ。今日は一くんと僕だから」
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