薄桜鬼

□神楽
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     〜10 神楽〜






「きみらしくない顔だね」



『は?』



私と総司は巡察に出かけた。



総司の怪我、というより体はもう大丈夫みたいだ。





「どうしたの?なにかあった?」



私の顔を覗き込んでくる総司。



私と総司の視線の絡み、それが耐えきれなくなってふいっと視線を外す。





『別に・・・・・・なんでもない』



「なら、いいけど」



珍しくこの日は深入りしてこなかった。



いつも訊きたがるのに・・・・・・











時は夕方――――



「お茶、置いておきます」



千鶴はかしこまり広間の幹部の人たちにお茶を配る。



今日は近藤さんと平助は江戸に出向いていた。



「あの・・・・・・山南さんは?」



「ちょっと調べ物してるみたいだよ」



「そうですか・・・・・・お茶、後の方が良かったですね。
淹れすぎちゃいました」



「置いとけ置いとけ。あれば、誰か飲むだろう」



「そうですか・・・・・・」






「辛い」



すると一が口を開いた。



「うわっ?!こりゃひでぇ・・・・・・これ作ったの総司だろ」



原田がおかずの野菜を箸で掴んで言う。



総司は不満気に眉を寄せて口を開く。



「なに?その言い方。とりあえず野菜茹でて醤油にひたすとこまでは僕がやったけど
・・・・・・別に不味くないと思うけどね」



総司は野菜を口の中に入れる。




「藍じゃねえのかよ」



「藍ちゃんは今日、具合が悪そうだ
ったから僕が代わりにやったんだけど」



総司の言葉に反応して土方さんが私に視線を向ける。




「本当なのか?藍」




ぼーっとしていた私はハッと我に戻る。



『な、なにが・・・・・・?』



藍らしからぬ返答に呆れる総司。




「巡察の時からこんな感じなんですよ。訊いたって何も答えてくれないし?」



『ごめん・・・・・・』



「何できみが謝るのさ、まるで僕がいじめた
みたいじゃないか」



またごめんと言いそうになる口を押さえる。




スッと一がお椀を持って立ち上がる。




「斎藤どうした?」



「水洗いしてくる。塩分の取り過ぎは健康を損ねる」



と、言い捨てると広間から出て行った。



その姿を見て原田も



「俺も」



立ち上がり、一の後に続くように原田も広間から立ち去る。



またそれに続くように土方さんも出ていく。



「じゃあ、僕もちょっとだけ洗ってこようかな〜」



茶碗を片手に持ち、総司も出て行った。



この場に私と千鶴が残される。




『・・・・・・やっぱ、辛っ』



その野菜を食べながらべっと不味そうに舌を
出し、苦笑する。



その姿を見てつられて千鶴も苦笑した。
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