薄桜鬼
□境遇
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〜18 境遇〜
私には何が起こったかどうして私の身体から
大量の血が流れているのか
そんなことを考えようとしても頭の中に入ってこない。
ただ、私を見下して見つめるその赤い眼光に
不吉なモノを感じた。
『な……にを……』
身体全身が麻痺しているのか解らないが、不思議と痛みは感じなかった。
私は少なからず残された精神力で見下ろすソイツを睨みあげることしかできなかった。
「危険なんだお前は。我々の想像以上に」
『何のこと……だ……』
若葉色の着物がまるで枯れた葉っぱの様な色に染まり
どんどんと私をその色で浸食していった。
「そうだな……冥土の土産に教えてやる」
ソイツは私を貫いた刀を眺めて、チャキッと私のすぐ目の前に刀を突き付けた。
「お前の中に世界を滅ぼすほどの力を持った化け物が巣食ってる。
ソイツが目覚めないうちに早くお前を殺さないと
手遅れになってしまうからな」
怪しい光を宿したソイツの目が細くなる。
私はその瞳を見た瞬間射竦められると同時に
どうにかしてこの場から逃げないとという思いに駆られ
『そうか……だが私も……
死ぬワケにはいかないっ!!』
力を振り絞り、鉛の様な身体を無理矢理起こし
懐の短刀を投げつけてやった。
「!」