薄桜鬼

□覚悟
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     〜26 覚悟〜







あれから伊藤甲子太郎の暗殺に出向いた新選組は無事、伊藤の暗殺に成功した。





が、そこで待ち伏せしていた薩摩藩衆に気付かず一手をとられた。

そして、その中には鬼と名乗り何度も千鶴を奪いに来た天霧と不知火の姿があった。

彼らは新選組を見逃す代わりに、千鶴をこちらに引き渡せと要求してきた。



しかし、その要求を飲まなかった新選組。彼らは意気盛んと薩摩藩衆に向かって行ったが

鬼の力で簡単にねじ伏せられてしまった。
その折、その場にいた藤堂平助も天霧に勇敢に立ち向かうも
彼もまた、簡単に天霧に倒され致命傷の傷を負ってしまった。












空中に広がる雲がまるで、新選組の先行きでも示しているようで
不気味で仕方なかった。

そんな寒空の下で、空を見上げる総司もまた、不安にかられていた。

と、彼は少し蹲り咳をこぼせば口に当てた布に赤い液体がついていた。
少し前なら毎日のように見てきたはずの液体なのに、何故に今になって不気味にすら見えてしまうのか。

そういう自分が少ないにしろ、心のどこかでそう思っているのが恨めしく感じた。








「羅刹隊なんてよ…あんなもんいつまで続けるつもりなんだよ」


ある部屋で不満を口にする永倉新八。



「そりゃ…俺だって平助に死んでほしいわけじゃねえけどよ。
斬った張ったをやってりゃ自分が斬られちまうことだってある。
だが、ここは死ぬことすら許されねえのか!」



新選組のやり方に拳を握りしめて怒りすら覚える永倉の傍らで
そんな彼とは対照的に妙に落ち着いて手入れをする原田。



「お前の気持ちもわかるけど…羅刹になると決めたのは平助自身だろ」

『……』



「私は、世界を守るために左腕を捨てる覚悟だって…命を捨てる覚悟だって出来ている!!」





昨夜に起こった出来事が今でも尚、瞼を閉じれば
瞼の裏に鮮明に浮き上がる。




「なんだ左之!お前もあの腐った計画に賛成なのか!?」

「いや、俺が正しいなんて…俺には言い切れない気がしてな」

「話になんねえな!」



怒って襖を勢いよく開け、出ていく後ろ姿を見て、原田は




「そんな風に怒れるお前が……羨ましいよ」



私と目を合わせほほ笑むと、槍に目を移しその槍に映る自分の瞳を覗き込んだ。






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