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□2.盗撮が犯罪って知ってますか?
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「あぁっ、もう!やめてください!!よーこーせー!!!!」

「おや、女の子がそんな言葉遣いをしてはいけませんよ。」


今はそれどころじゃありません!と言いながら明智先生の手中に収められている携帯をどうにかして取り上げてやろうと手を伸ばしてぴょんぴょん飛んでみるが、やはり届かない。恐らく30cmくらいは身長差があるために先生が手を頭上に伸ばしてしまえば脚立でもないと届かないほどの高さ。

身長差もそうだけど、この人無駄に反射神経が良いのか時々携帯を持っている手を低くしてちらつかせたかと思えばサッと私の手を避ける。

完全に私はオモチャにされている気がする。だって、先生の顔がとても楽しそうだから。何が楽しいんだ。私の苦戦する姿がそんなに楽しいのか。


「悔しそうですねぇ…未都のそのような顔を見ているだけでそそられてしまいますよ。」

「はぁ、はぁ…息切れしている私を見てそう思うのは先生だけですよ。」

「おや、もう諦めてしまいましたか。もう少し遊んで頂けると思ったのですが…」

「明智先生を楽しませるために必死こいていたわけじゃありません!!」


そんな私を相変わらずフフフと笑ってのける。息切れするまで挑んだのに、ここまで勝目がない私を嘲笑っているのだろうかこの大人は。

至って真面目に待ち受けを消して欲しい私に対して、それを心底面白がっている。明智先生の笑いのツボは一生理解出来ないと思う。


「あの、まず一つ聞きます。いつその写メを撮ったんですか?」

「確か先週でしたか、委員会直前までプリントがまとまらず必死に作業に打ち込む未都姿の激写に成功しました。よく撮れていたでしょう?」

「…その日のことは覚えてますけど、シャッター音なんてしませんでした!」


そう言い返す私に再び携帯を点けて何やら開いている。そして、これですよと言ってその画面をこちらに向けてきた。
…ただのカメラ起動画面にしか見えない。これの何を伝えたいのだろう。


「若者なのに時代遅れですねぇ。巷で噂の無音カメラですよ。優秀なアプリに出会えました。」

「あの、それ盗撮に一番使っちゃダメなやつじゃないですか。」

「盗撮だなんて聞き捨てなりませんね。私は私にとっての癒しを待ち受けにするべくこのアプリを活用したのですよ。」


盗撮だと認めないと来たか、この変態教師め…!!無音カメラのアプリはそりゃあ知ってるけど、学校の先生がこのアプリをフル活用するなんて思ってもみないじゃないか。
癒し癒しって、先生の目もついにおかしくなってしまったのだろうか…


「その目は何ですか…私は真実を述べているだけですよ、黙秘よりまともでしょう。」

「私は、からかわれているか先生の目がおかしくなったかしか思い当たりません。」


本音を述べると、先生が大きく溜め息をついた。私はそんなに呆れるような発言をしただろうか。
先生が目を伏せると微かに動く長い睫毛。女の私が羨むくらい、この人は綺麗だと思う。こんな時でも、そんなことを考えさせてしまうほどに。
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