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□1.本気じゃないと知っていた
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「僕はね、幸せだよ?こうして未都ちゃんと二人きりで居れることが。」
「…ふふ、お上手ですね。相変わらず。」
後ろから包み込むようにぎゅうっと抱きしめてくる。白澤さまに抱きしめられることには慣れているけれど、最近はこの温かさが好きだ。同時に複雑な思いが交差してしまうのは変わらないが。
「…白澤さま、今日もお仕事が終わったらお邪魔しても良いですか?」
「未都ちゃんからのお誘いなんて珍しいねぇ。勿論だよ、部屋で晩酌なんてどう?」
「良いですね、楽しみにしています。」
どうせ晩酌だけで終わらないでしょう、と口は出さずに考えていた。少しでも一緒に居たくて堪らない気持ちは、絶対に彼より私の方が勝っている。
最初から知ってますよ、本気じゃないことくらい。私は沢山の女の子の中の一人にしか過ぎないのだから。
一時の幸せと大きな虚しさばかりのこの関係は、私にとっての心の拠り所。
2014/05/31
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