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□2.私は私、あなたはあなたです
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「わざわざお仕事まで切り上げて頂いて…お気を遣わせてしまって、すみません。」
「ただのおせっかいですよ、気にしないでください。…また、何かあったようですね。」
「はい、鬼灯さまはやはり鋭いお方ですね…」
僅かに笑みを浮かべるも、その笑みはどこか困ったようで悲しそうにも見えた。貴女にはそんな笑顔は似合いませんよ、と言いたいところだったがその言葉は飲み込み彼女の話を聞くことにした。
「…見ちゃったんです。」
「意味深な言葉ですね…何をですか?」
「彼が、私と同じ部署の女の子と手を繋いでいるところ。」
また、彼女は悲しそうな笑みを洩らした。視線は少しずつ下に向いていくも、口調は至って落ち着いている。未都さんなりの強がりなのだろうか。
そして私が言葉を発する前に再び彼女の口が開く。
「普通私と遭遇してもおかしくない場所で手繋ぎます?バカみたいですよね、それにその女の子…あまり話したことはなかったけど素敵な彼氏さんですねって言われたことがあって。ほんと、二人とも意味わかんな…」
「とりあえず、落ち着きなさい。」
先程よりもやや早口で話していた言葉を遮るようにそう言い、わしゃわしゃとその頭を撫でてやる。撫でる、と言うよりもほぼ髪を乱すだけの行為に近いのですが。
「…落ち着きましたか。」
「は、はい…愚痴が止まらないところでした。」
「その愚痴は近々ゆっくり聞かせてください。一つ確認します…浮気の度合いは個人で異なるものだそうですが、未都さんは許せないレベルだったと。」
「…はい、それに嘘もつかれていました。」