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□皆でおひるね
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春の昼下がり、それは不思議とすべての者を眠りへと誘う。
それは人間だろうと悪魔だろうと半魔であろうと変わらない。勿論Devil May Cryも例外ではない。


「眠……」


家事も全て終え、俺はソファーでゆったりとしていた。隣ではバージルが本を読んでいる。


「眠いのなら部屋に戻ったらどうだ。」

「んー……」


ダメだ気持ちがよすぎる。ベッドの上で眠るというのとは少し違う、昼寝というのは独特の気持ち良さがある。まどろみにいる為言葉を話すのもおっくうになる。


「お、ネロも寝んのか?」


上から若の声が降ってきてそのまま隣に座る。今、バージルと若に挟まれている状態である。


「『も』って、若も寝んのか?」

「こういう時はベッドとかじゃなくてこういう場所で昼寝すんのが一番だろ。」

「…同感…」


既に半分夢うつつで若の意見に同意をする。もうこのまま寝てしまおうかと考えたとき、若の体がコッチに寄ってきた。


「坊やたち、俺も入れてくれよ。よっこらせっと…」

「オッサン、もう定員オーバーだ。」

「詰めればあと一人くらい何とかなるだろ。ここが一番日当たりが良くて絶好の昼寝場所なんだよ。」

「他行けよ。」


そう言いながらもこっちに詰める若は何だかんだ優しい。俺も仕方ないから少し詰めると、バージルが狭いとオッサンを睨む。


「大目に見てくれよ。少しの間だけだ。」

「お?皆で昼寝か。」


今度は初代が来た。アンタもか。何で皆ここに集まってくるんだろう。気持ちは分からなくもないが。


「……もうアンタの場所はないぜ。」

「じゃあここでいい。」


そう言って、初代は俺の足元に座り込んだ。どうやら純粋に暖かいところに居たかったようだ。

これだけ大所帯になるとバージルの眉間にも皺が寄る。しかし、ふうっと諦めたように息を吐くとまた本へと視線を戻した。


「ねむ……」


マジで眠い。横の若を見れば既に寝息をたてている。俺も眠ってしまおうか。


「眠けりゃ寝りゃいいさ。こんな日ぐらいゆっくりしたってバチは当たらない。」


オッサンの低い声が聞こえて俺はそのまま眠ってしまった。















「I'm home.」


しばらくして依頼から2代目が戻ってきた。しかし、おかえりの声が聞こえないのと、いつにもましてしんと静まり返っている事務所に疑問符がでる。

しかし理由はすぐに分かった。


「皆で昼寝か…」


ソファー周りに集まっていた者は全て眠っていた。バージルは読みかけの本を膝に置いて、ネロはそのバージルに寄りかかるように、若は大きな口を開けて、髭は腕を組んで俯いて、初代はネロの膝に頭を乗せるように座ったまま。
それは酷く平和的で、いつもの喧騒からは想像もつかない程優しいものに見えた。これが春の力というやつか。

しばらく皆を見つめて2代目は何かを思いついて部屋に戻ると、その手にカメラを持ってきた。

   カシャ

シャッター音がして撮影が行われる。皆で寝ているのはなかなか見られる光景ではないので思わず写真に収めたくなったのだ。


「Sweet dream.」


クスッとめったに見られない笑みを彼は零し、皆が起きた時の為にとコーヒーを沸かす。
とある春の昼下がりである。



余談だが、彼の部屋の机の上には一つの写真立てがある。そこにはあの日、こっそり撮った写真が入っていて、隅の方に小さく『My family』と書いてある。
そのことは2代目しか知らない秘密である。
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