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□Baby panic!
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それは突然の出来事だった。
いつもは朝早く起きてくるネロの姿が見当たらない。珍しく寝坊かとも思ったが、髭や若よりも遅く時刻は昼過ぎを指していた。
さすがに遅いと思って様子を見に行った初代が驚きの声を上げた。
「二ィィィィロォォォ!?」
「ぶっ!」
突然事務所中に響き渡る叫び声に若が飲みかけのトマトジュースを吹き出す。
その直後、ドタドタと音がして慌ただしく初代が降りてきた。そして手には何かを抱えていて……
「どうしよ!ネロがガキになった!」
抱えていた小さな子供を皆にみせるようにズイっと突き出す。
瞬間またも若がぶーっと吹き出す。
「はああああああっ!?」
「ヒュー」
若は驚き、髭は口笛を鳴らす。バージルも眉間に皺を寄せ、2代目ですら少し目を見開いた。
「どういうことだよ!」
「知らねぇよ!様子見に行ったらコイツがいたんだ!……このガキ…どう見てもネロだよな。」
くるくるとした銀髪の猫っ毛にアイスブルーの瞳、それは紛れもなくネロのものだった。
ただ違うのは愛らしいぷっくりとした頬に大きな瞳、そしてそのサイズ。
「ネロがガキになっちまった…」
若の呟いた言葉は非常にも現実であった。
当の本人は成長時の記憶はないのかキョトンとした顔でこちらを見つめていた。
「どういう事だ?」
「ん〜…こりゃ魔力のせいだな。」
「は?どういうことだオッサン。」
「ネロは俺達と違って魔力が安定しない。ここ最近ネロが依頼に張り切っていたのは覚えているな。」
2代目が代わりに説明したようにここ最近のネロは、目に見えて張り切っていた。聞けば力があふれ出てきて落ち着かないと言っていた。
「それってアイツの力がついてきたって事じゃなかったのか?」
「まぁそれもあるだろうが、それにしては異常だった。多分それも魔力が安定してなくて極端に力が湧いて出たり、今みたいに限りなく0に近づいたりもするって事だ。」
「マジで?魔力無くなったらこんなちっこくなんのかよ。」
「まぁ一種の副作用みたいなもんだろうな。時間が立てばまた戻るだろう。」
2代目がそう言い切ったのでひとまず安心だが、それまで目の前の子供をどうするかとなった。
「いや〜しかし可愛いな。」
オッサンがニヤニヤと仔ネロの顔を覗き込む。
それを仔ネロは嫌そうな顔をした。
「オイ、あんまヒビらせんなよ。」
「そういうつもりは無かったんだが…」
「ゴメンなー突然こんなオッサンがきて怖かったろー?」
初代がニコニコとしながら話しかける。
どうやら彼は小さなネロに心を奪われてしまったようだ。
「おっしゃん?」
「お、喋った。」
どうやら言葉は話せるようだ。だが成長時とは違い、子供らしい舌っ足らずの喋り方になっている。
「そう〜そこの髭はオッサン。俺は初代な。」
「んー…しょだい?」
「そうだー偉いぞ〜」
初代はもうデレデレでネロの頭を撫でる。
「よぉし、俺は若な。」
「わかー」
「そうだ。んでこっちが…」
「パパ!」
「へっ?」
ネロは突然バージルを見てパパと言い出した。
「ぱっ…パパ?」
「パパー」
ネロは両手をバージルの方へと突きだしてパパと言っている。
対してそのパパは眉間に皺を寄せ、困惑した視線をネロに送っていた。
「Oh…こんなんになっても父親を本能で分かるもんなんだな。」
髭が手を顎に当てて感心したように呟いた。
「それにしても…パパって……プッ」
思わず笑った若をバージルはぎろりと睨む。
「だってさあのバージルがパパだぜ!?父さんとかならまだしもパパって…プハッ!」
「黙れ。細切れにしてカレーに入れるぞ。」
「ハイハイ。じゃあパパ、我が子を抱いてやんな。」
初代がにこやかにネロを差しだすのを見て彼はふざけるなと睨む。
「可愛いじゃないか。抱いてやれよ。」
「元々俺の子ではない。」
「うわひっでぇ。そんな事言うのか。ネローお前のパパは酷い奴だぞー」
「オイ、何を吹き込んでいる。」
「んー?パパは優しいよ?」
成長時では見せないような無邪気な笑顔でネロは言った。
「〜っ!ああ可愛い!!可愛いすぎる!」
初代がギューと抱き締める。
それがバージルには面白く無かったのか初代の腕からネロを奪い、その手に抱いた。
「ぱーぱー」
「……」
我が父に抱かれてキャッキャッと喜ぶネロにバージルはただ黙って頭を撫で始めた。
「!?バージルがちゃんと父親やってる!」
「五月蝿い。」
「しかしよくなついているな。やっぱ父さんの腕が居心地がいいんだろうな。」
「俺にも抱かせてくれ。」
2代目がバージルからネロを受けとる。
バージルだと若すぎて違和感があったが、2代目だと普通の親子のように見える。
「じいじ!」
突然ネロが2代目を指して声を上げる。
「……髭…俺はそんなに年寄りに見えるか…?」
「まぁ一応俺よりかは年上だしな。」
「…………」
「じいじっ!じぃじ〜!」
2代目がズーンと落ち込んでいると今度はヒョイと髭がネロを抱き上げた。
「ほーら髭だぞーじょりじょりー」
アイデンティティーの髭をアピールするようにネロに頬擦りするが、当のネロは嫌そうに抵抗していた。